
全国に拠点を展開し、約1,700名のスタッフが所属するベンチャーサポートグループ(以下、VSG)。同社では現在、税理士の役割を「記帳作業の代行」から「経営支援」へ転換する取り組みを進めています。
税理士事務所において、顧問先が増加するにつれて日々の記帳業務の負担が増し、経営相談などの付加価値業務に時間を割けなくなるケースは少なくありません。VSGも同様に、手作業での入力に追われることで、本来の支援へ注力できないという課題を抱えていたといいます。
この状況を打開するため、同社は情報基盤としてGoogle Workspace(GWS)を導入し、株式会社SoLaboが開発する税理士事務所向けシステム「TaxSys」を組み合わせました。顧問先のデータを1か所に集約し、手作業で行っていた記帳業務をAIへ委譲する仕組みを構築しています。
本記事では、VSGが記帳業務の負担を軽減し、経営支援へシフトするために実践したGWSとTaxSysの具体的な活用法と、現場の変化について紹介します。
目次
記帳業務に追われ、付加価値を提供できないという危機感
VSGが新しいシステムの導入を検討した背景には、税理士業界を取り巻く環境の変化がありました。IT技術を駆使する新興企業が台頭する中で、従来の業務手法を続けることへの不安を抱いていたといいます。
顧問先が増加するにつれて、記帳作業や資料整理といった日々の業務に多くの時間を奪われる構造的な課題がありました。「このままでは価格競争に巻き込まれ、十分な支援ができなくなるのではないか」と、経営層は当時の危機感を振り返ります。
また、VSGは経営コンサルティングの本質は「お金と税という出口」を把握することにあると語ります。売上を伸ばしても税金の処理が不十分であれば意味がなく、この出口を守る専門知識こそが税理士の強みです。しかし、記帳作業に時間を取られたままでは、本来の価値である経営の意思決定を支える支援に注力することができません。
この状況を変えるためには、記帳業務にかかる時間を削減し、価格競争に対応できる内部構造を作る必要がありました。そこで同社は、作業負担を減らし、付加価値の高いコンサルティング業務に集中できる体制の構築へと踏み切りました。
GWSでデータを集約し、TaxSysで作業をAIへ委譲する
VSGは課題の解決に向け、単なるツールの導入ではなく、顧客データを1か所に集約し、作業をAIへ委譲する体制を選択しました。情報を蓄積するための器としてGoogle Workspace(GWS)を導入し、その中で実務を動かすエンジンとしてTaxSysを組み合わせています。
約1,700名が所属する組織への定着には、旧システムからの移行という壁がありました。VSGは過去の経験から、一部のテスト運用では移行が進まないと判断し、全社での一斉導入に踏み切りました。「これまで使っていた入力システムの利用を禁止し、変わらざるを得ない状況を作った」と同社は語ります。
一斉移行に伴う現場の混乱を抑えるため、操作方法を機能ごとに短い動画にまとめ、社内へ配信しました。スタッフが必要な時にオンラインで手順を確認できる環境を整えることで、新しい業務フローの定着を進めました。
情報の「器」となるGoogle Workspace
AIを活用するためには、その前提として組織内に散在する情報が一元管理されている必要があります。Google Workspaceは組織全体の業務を支える基盤であり、特にその中核となるGoogle Cloudのストレージへ顧客の資料や面談記録を集約します。
従来は紙や個人のパソコンに分散していた情報をクラウド上に蓄積することで、担当者や拠点を越えた情報共有が可能になります。データが一箇所にまとまることでAIが参照しやすくなり、将来的なデータ活用の土台が形成されます。
税理士実務を動かす「エンジン」となる株式会社SoLaboの『TaxSys』
GWSに集約した情報を、実際の税理士業務と直結させる役割を担うのが、株式会社SoLaboが開発・提供する『TaxSys』です。顧問先を登録するだけでGWS内にフォルダを自動生成し、情報の整理を標準化します。
アップロードされた証憑はAI OCRによってデータ化され、利用する各種会計ソフトに応じた形式で出力されます。これにより、最終的に利用する会計ソフトが異なっていても、入力前の業務フローを統一することが可能です。
また、AIが読み取り結果の信頼度を3段階で自動判定し、残高のズレなどをアラートで通知します。担当者は手作業での入力ではなく、要確認箇所のチェックと判断のみに集中できる環境が整います。
記帳コストを最大80%削減し、処理スピードを短縮
GWSとTaxSysの連携が現場に定着したことで、VSGの記帳業務にかかる時間と費用は明確な数値として減少しました。外部の記帳代行サービスに依存していた業務を社内でのデータ処理へ切り替えたことが、この結果に繋がっています。
同社がシステム導入後に計測した具体的な変化は、以下の通りです。
- 処理期間:完了まで2〜3週間かかっていた入力業務が、当日〜翌営業日に完了
- 処理費用:1仕訳あたりの単価が30円から17円に下がり、外注費を70〜80%削減
- 作業時間:組織全体で月間18,200時間の作業時間を削減
処理速度の向上は、現場の働き方にも変化をもたらしています。「入力作業が終わってしまって仕事がない」という声が、創業以来初めて現場のスタッフから上がったとVSGは振り返ります。これまで多くの時間を費やしていた作業が短縮されたことで、スタッフの業務に余白が生まれました。
入力拠点での業務の滞りが解消されたことで、月次決算の完了にかかる日数も平均7営業日から4営業日へと減少しています。作業にかかる時間と外注費の両面を見直した結果、年間換算で約2億3,400万円のコスト削減が見込まれるとのことです。
創出された時間とデータを活用し、「経営コンサル」を実現
記帳業務の効率化によって生み出された時間は、単なる作業負担の軽減ではなく、より付加価値の高い業務へ振り向けられています。これまで入力作業を中心に行っていたアシスタントが顧客との資料回収を直接担う体制へ移行し、担当者が経営支援に使える時間を確保しました。
担当者はGWS上のデータと創出された時間を活用し、具体的に以下のような支援を展開しています。
- 売上構造の分析とターゲット選定を行うマーケティング支援
- 融資、保険、事業承継などを網羅する総合的な財務支援
実際の事例として、インバウンド需要の低迷に悩む時計卸売業に対し、データを基に高価格帯商品へのターゲット変更を提案したケースがあります。結果として対象企業の売上高が25億円から40億円へと回復し、同時に5,000万円の追加融資獲得や法人保険の契約といった財務基盤の強化にも繋がったとのことです。
このような経営支援へ注力した結果、担当者1人あたりの担当件数は40件を超え、売上高も3,000万円台に達しています。VSGは「作業時間を短縮することが目的ではなく、効率化で生まれた時間をお客様への価値提供に変えていくことが重要です」と語ります。
AIに作業を任せ、税理士は経営者の未来を創る伴走者へ
VSGは、記帳代行や申告書作成といった定型作業が、AIの進化によっていずれ自動化されると予測しています。作業にかかる時間が減少する一方で、経営者との対話や意思決定の支援はAIに置き換えられないと指摘します。
経営者の抱える課題に向き合い、感情を動かしながら解決策を提示することが、これからの税理士に求められる役割です。同社は、「税の計算が自動化された今こそ、顧客の経営支援という本質に業界全体でシフトすべきだ」と今後の展望を語ります。
GWSとTaxSysを活用したデータ基盤の構築は、この経営支援を実現するための環境づくりです。顧客の一次情報をクラウド上に蓄積し、入力業務をAIへ委譲することで、税理士が顧客の未来を創る業務へ注力することを可能にします。
過去の数値を処理する体制を見直し、付加価値の高い支援を展開する組織への転換が求められています。税理士事務所の生産性を高め、経営支援に集中する環境づくりを支える「TaxSys」の詳細は、以下よりご確認いただけます。















