
AIや自動化ツールの普及により、記帳・申告といった従来の基幹業務は急速に効率化が進んでいる。しかし、ミスのない申告書作成、情報の一元管理、顧問先とのコミュニケーションといった会計事務所が抱える本質的な課題は、依然として解決されていない。
AIを活用したいと思いながらも、どこから手をつければいいか分からない。所長は使っているが、スタッフには浸透していない。そんな声が業界全体に広がっている。プロンプトの書き方を覚えなくても、クリック1つでAIが動く――そんな環境があれば、この状況は変わるのではないか。
その答えを体現しようとしているのが、会計事務所向けグループウェアのパイオニアとして3,200を超える事務所に導入されているMyKomonだ。開発を手がける名南経営ソリューションズの浅井社長と開発責任者の伊藤氏に、AIを活用した業務効率化の全体像と今後の展望について、TAX CONNECTIONの税理士・古尾谷が取材した。

- 右:株式会社名南経営ソリューションズ 代表取締役社長 浅井 克容様
- 左:株式会社名南経営ソリューションズ 開発2部 マネージャー 伊藤 太一様
目次
MyKomonが支持され続ける理由
グループウェアを中心に教育システムや給与計算、相続など、豊富な機能が揃っているMyKomonですが、現在のユーザー数を教えていただけますか。
浅井:今は約3,200事務所です。
会計事務所が3万弱と言われているので、約1割の事務所が使っているということですね。
浅井:私としてはまだまだです。車で言うとトップのトヨタが4割のシェアを持っていますよね。そう考えると、3万事務所のうちの4割、1万2,000事務所に使っていただいても全然おかしくないと思っています。
MyKomonはユーザー数が増え続けており、解約が少ないとよく聞きますが、その理由は何でしょうか。
浅井:まず、我々名南経営自身も一つの会計事務所であるという点が、他メーカーが提供しているグループウェアとの一番の違いだと思います。ITのスキルがある事務所はいろんなツールを自分で組み合わせて使っていけますが、そういう専門の人材がいる事務所はほんの一握りです。しかし、MyKomonならとりあえず導入してしまえば一通り揃っていて楽という部分が、解約が少ない理由の一つだと思います。
伊藤:サポート体制の充実も大きいと思います。不明点があって電話をしても、音声案内が長くなかなか解決しないサービスも多いと思いますが、弊社は最初からきちんと人間のオペレーターが出てサポートしますし、1事務所1担当という形で専任のフォロー担当者が一緒に伴走しています。
金額も手頃で、小規模事務所でも導入しやすいですよね。
伊藤:20年前の料金から変わっていないどころか、むしろオプションのサービスは値下げしているものもあります。コストパフォーマンスという意味では、業界最高水準ではないかと思っています。
空気のようにAIを使う環境をつくる
AI活用によって広がるMyKomonのサービス展望について、浅井社長からお聞かせいただけますか。
浅井:まず大前提として、生成AIという技術にはすごく可能性を感じていますし、間違いなく今後の会計業界の仕事のあり方を変えていくものだと思っています。ただ、どう使ったらいいか分からない、他の事務所はどうしているのかといった声も多く、本格的に業務に直結して使っている事務所はまだ少ないのではないかと思います。
所長先生は使っているけれど、従業員は全く使っていないというケースも多いですね。
浅井:分からないことがあったらAIに聞く程度の使い方はされていますが、業務処理の自動化といったところまで活用できている事務所はまだ少ないです。理由としては、AI自体が発展途上であることや、生成AIだけではできることが限られていることが挙げられます。
今後いろんなシステムが生成AIと連携する環境が整ってきて初めて、基幹業務に直結した活用が本格化するのではないかと思っています。またAIを使いこなすスキルの差もあって、うまく使っている先生とちょっと質問するだけの先生とのギャップが今後どんどん開いていくのではないかと思います。
我々の役割としては、プロンプトをどう書くかといった細かいことを知らなくても、クリック1つでAIが動くような仕組みを作ることで、知らないうちに空気のようにAIを使える環境を整えていくことだと感じています。
伊藤:また、各職員が自由に生成AIを使うとなった際に、セキュリティが不安という声も良く聞きます。MyKomon AIでは、情報をAIモデルが学習しないよう考慮されていますので、安心して職員のみなさまにご利用いただけたらと思います。
AI報告書作成と顧客まるわかりレポート
3月にリリースしたAI搭載新機能について、その概要や特徴についてお聞かせください。
伊藤:まずは第1弾として、2026年3月より、4つの機能のβ版提供を始めました。今回リリースした各機能のご紹介に入る前に、少しAIについての補足をさせてください。
AIは通常、一般的な内容しか回答が出来ません。ですが、顧問先ごとの詳細情報をAIが参照することで、よりその顧問先に応じた提案、処理をさせることができます。顧問先ごとの詳細情報とは、MyKomon上に登録される日々の報告書や、電子会議室での顧問先との日々のやりとりです。この資産が溜まれば溜まるほど、AIによる業務支援の精度は高まり、より個別具体的な提案に繋がっていきます。
そういった意味で、我々は「報告書」や「電子会議室」への情報の蓄積が今後のAI活用のキーになると考えています。そのため、今回リリースした機能の中心には「報告書」「電子会議室」を据えています。
前置きが長くなりましたが、今回リリースした機能について順にご説明いたします。まずは『テキストレコーダー』と『AI報告書作成』です。
現在、メモ書きや記憶を頼りに報告書を作成していることも多いと思います。帰社後にすぐ記載できればまだ記憶も新鮮ですが、他の仕事に手を付けてしまい数日経過すると、何を話したか覚えていないケースも多いと思います。手間がかかるからこそ後回しになり、後回しになるから忘れ、決算を組むときに面談時に聞いた注意点を思い出せない。そんな方も多いのではないでしょうか。
『テキストレコーダー』と『AI報告書作成』は、報告書の作成をほぼ自動化できるAI機能です。『テキストレコーダー』は、面談時の会話内容の音声データをもとに、AIが文字起こしをする機能です。音声データは文字起こし後すぐに削除されるため、残ることはありません。
『AI報告書作成』は、テキストレコーダーで文字起こしした会話内容をもとに、ボタン1つでAIが報告書の形式にまとめる機能です。他社のオンライン面談ツールなどで文字起こししたテキストからも作成可能です。面談時に『テキストレコーダー』を開始させ、帰社後に『AI報告書作成』のボタンを押す。これだけでほぼ手間なしで報告書の作成が可能です。報告書の形式も、AIにお任せもできますし、指定したフォーマットに沿う形でAIにまとめてもらうことも可能です。

報告書の形式はみんなバラバラですから、定型フォーマットでAIが自動的にまとめてくれるのは便利ですね。
伊藤:報告書がきちんと蓄積されていくと、次の価値としてAIがデータを参照して提案する段階に繋がっていきます。その第一歩が『顧客まるわかりレポート』です。
報告書や電子会議室のやり取りをベースに、AIによって過去のクレームや家族・役員の関係性、触れてはいけない話題がないかなど、「最近のクレーム、不満について」「会社の重要イベント(移転、投資、人事、資本政策、訴訟など)」「キーマン(社長、番頭、経理責任者)の近況」などの観点でまとめられます。それ以外にも、観点は自由にカスタマイズが可能です。5分で顧客のことが分かるレポートとして、担当引継ぎや所長先生が同行する場面でも活用できます。
所長先生にとっては本当にありがたいですし、担当者としても伝える手間が省けますね。
ミスと漏れをなくす、文章校正・タスク生成機能
文章校正機能も備わっていますよね。
伊藤:はい。誤字脱字など文章の校正はAIの得意分野です。MyKomonの機能で文字起こしから報告書まで一気通貫で行えば、追加で校正する必要はありませんが、電子会議室では手入力が必要な場面も多いと思います。そういった時に、AIが誤字脱字を修正し、より読みやすい文章に整えてくれます。
また、お客様向けの言い回しを考えることが苦手な方向けに、伝えたいことを箇条書きで残しておくだけで、ボタン1つでお客様向けの適切なビジネス文章に変換する機能も提供しています。
電子会議室やメールシステムと一体化しているのが使いやすいですね。別画面を開く必要がないので作業をスピーディーに進められそうです。
伊藤:もう1つ、タスク生成機能があります。電子会議室で「○○について教えてください」と問い合わせがあった時に、内容を調べてから回答するというタスクが発生します。今まではカレンダーの画面に移動して自分でToDoや業務予定を手入力する必要がありました。タスク生成機能では、AIが自動で電子会議室の内容からタスク化すべき内容をピックアップしてくれるので、あとは登録ボタンを押すだけです。

手作業だとつい入力し忘れてしまうことがありますが、自動でタスク化されるから漏れもなくなり、非常に便利ですね。
伊藤:自分のタスク管理だけでなく、外出先から内勤スタッフに依頼する際も、依頼のToDoとして登録すれば、これまでよりスムーズに登録できます。これらの活用が進むことで業務の抜け漏れもなくなり、お客様により喜んでいただけたらと思っています。
第1弾として本当に実用的で素晴らしい機能が追加されていますね。
AI-OCRと申告書チェックの自動化
今後第2弾、第3弾とさらにバージョンアップされていくと思いますが、どんな機能を構想していますか。
伊藤:現在、精度の高いGeminiのAI-OCRに着目し、研究を進めています。MyKomonとAI-OCRが合わさることで、活用の幅はさらに広がっていくと思っています。顧問先が通帳などをアップロードするだけでAI-OCRが動き、会計事務所側が確認するタイミングで任意のフォーマットの仕訳のCSVができていれば、ダウンロードしてどの会計ソフトでも取り込むことができるはずです。
また、手書きで報告書を書かれる方も、スキャンや写真を添付するだけで自動的に文字起こしされればもう1度書く手間が省けますし、検索にも引っかかるようになります。GeminiのAI-OCRが優秀な点は、判読の難しい手書き文字でもとても高い精度で文字起こしをしてくれるところです。
手書きのメモを取る人にも便利な機能ですね。
伊藤:もう1つは、決算書や申告書のチェック機能です。将来的には、申告書や決算書をPDFでアップロードすると、共有フォルダにある証憑書類をAI-OCRで参照しながら、電子会議室や報告書の内容からその顧客独自のチェック項目も生成し、MyKomon上にある標準的なチェックリストとあわせて、自動的にチェックしてくれる状態を目指しています。ここまでの機能が実装できれば、大きな価値になると思っています。
浅井:MyKomonの特徴として、AIモデルの使い分けがあります。先ほど「GeminiのOCRが優秀」という話がありましたが、正確に言うとGeminiそのものではなく、その前工程にあるGoogle独自のOCR機能が優れているんです。そのOCRで読み取ったデータをGeminiに投げているという形です。
OCR以外の部分では、用途に応じてOpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、Geminiなど、最も適したモデルを選んで使っています。ユーザーが複数のAIの使い分けを意識しなくても、自動で最適なモデルを選んで組み込んでいる点がMyKomonならではの強みだと思っています。

会計業務の高度化を支えるMyKomonの将来像
今後の将来的な展望を教えていただけますか。
浅井:マクロな視点で言えば、日本は少子化で今後さらに人口が減少し、採用環境はますます厳しさを増していくでしょう。人手不足は避けられない以上、AIやDXの技術を活用せざるを得ない時代になります。もちろん最終的な判断やチェックは人間が行うべきですが、下処理や前工程の部分はAIやDXで自動化されていく世界が来ると思っています。我々もそれらの技術を活用し、会計業界の業務を革新できるような仕組み作りを追求していきたいと考えています。
具体的には、どういった部分にAIを活用していこうと考えているんですか?
浅井:会計事務所で一番中心の仕事は、決算を組み申告書を作成することです。会計ソフト業界ではAIを使った自動仕訳などに各社がトライしていますが、MyKomonはグループウェアや情報共有ツールという位置づけなので、そこにどうAIを組み込むかが焦点になります。
その一つが、決算申告書の精度向上です。人間が作業する以上どうしてもミスは避けられませんし、複数人でチェックを重ねてもすり抜けることがあります。ミスが起きればさらに確認工程を増やすことになり、チェックに費やす時間が際限なく延びてしまいます。そこをAIに任せて、試算表から決算書・申告書まで一括で検証し、間違いを指摘してくれる仕組みを構築したいと考えています。
その仕組みを実現するためには、顧客ごとの個別情報も不可欠になりますよね。
浅井:はい、精度の高いチェックをするためには顧客固有の情報が欠かせません。先ほども伊藤が触れましたが、それらの情報はMyKomonの中にすでに蓄積されているんです。電子会議室には税務相談など顧問先とのやり取りの記録が残り、共有フォルダにはPDFやExcelの資料ファイルが保存されています。さらに面談の録音・文字起こしをもとにした報告書まで一元管理されているので、これらを全てAIに読み込ませることで、顧客の個別状況を踏まえた精度の高いチェックが実現できると考えています。
例えば、個人事業主では副業的な収入があったりすることは珍しくありません。それを担当者が面談で聞いていても、決算の時に忘れてしまうことがあります。普段チェックしている通帳にも残らない収入は口頭で聞いただけでは漏れが生じがちです。しかし、AIが面談記録を残していれば、申告書を作成する段階でその収入の漏れに気づくことができます。
ストレージや電子会議室、業務報告書など、AI化の基盤がMyKomonの中にすでに整っているということですね。弊社でも、AI化に向けてシステム変更を進めていますが、やはりAIを有効活用していくためには、ビッグデータを一箇所に統合することが必要だと感じています。MyKomonを使っていれば、すべてのデータがすでに集約されているので、AIの性能を最大限に引き出すことができそうですね。
伊藤:まさに、そこがMyKomonのAI活用の一番のメリットであり強みでもあります。AIを活用したいと思った時に、今の業務フローに特別な工程を追加する必要はありません。今まで通りMyKomonを使い続けていただくだけで、自然と電子会議室にやり取りが残り、報告書も蓄積されていきます。
我々には、会計ソフトや申告ソフトはあえて作らない、というスタンスがあります。つまり、特定のメーカーに縛られず、あらゆるソフトと連携できるということです。申告書や決算書、仕訳データについても、各メーカーのソフトとデータ連携できる環境を整えることで、AIの活用範囲をさらに広げていけると思っています。そういった幅広い連携を実現していくことも、我々の重要な方向性の一つです。
マルチAIにお任せするだけで、業務の効率化が図れるようになれば、会計業界にとって本当に心強いシステムになりそうですね。
参加者プロフィール
- 浅井 克容 様
- 株式会社名南経営ソリューションズ 代表取締役社長
株式会社名南ネットワーク代表取締役を兼任。名南経営グループの一員として、主に全国の会計事務所の業務効率化と生産性向上を支援する事業を統括。自社で抱える課題解決のために開発した士業向けクラウドサービス『MyKomon』の提供を通じ、「会計業界を革新することで中小企業の未来へ貢献し人々を笑顔にすること」を目指している。 - 伊藤 太一 様
- 株式会社名南経営ソリューションズ 開発2部 マネージャー
名古屋大学大学院卒業後、2012年に新卒で名南経営に入社。2018年より相続財産シミュレーション、楽しい給与計算、WEB明細、勤怠管理、会計担当者養成講座動画などを担当する開発2部のマネージャーに就任。2025年10月よりAI研究チームの責任者を兼任。
企業情報
- 項目
- 詳細
- 企業名
- 株式会社名南経営ソリューションズ
- 事業内容
- 会計事務所向けグループウェア「MyKomon」の開発・提供。教育システム・給与計算・相続シミュレーションなど、士業向けクラウドサービスの企画・運営
- 導入実績
- 全国3,200超の会計事務所に導入
- サービス
- MyKomon(グループウェア)、MyKomon AI(AI報告書作成・顧客まるわかりレポート・文章校正・タスク生成)















