ストライク×日本M&Aセンター 徹底比較! 税理士が明かすM&A仲介会社の実態

事業承継の2035年問題が迫る中、M&A仲介業界を牽引するストライクと日本M&Aセンター。ストライクの無料提携が実現する間口の広さと案件推進力、日本M&Aセンターの有料提携が生む帰属意識と包括的サポート。それぞれが異なる価値を提供し、多くの税理士が両社を併用しながら、顧問先に最適な支援を届けている。
AIが台頭する時代においても、「経営者の気持ち」に寄り添う支援は人間にしかできない。提携税理士が語る現場のリアルと業界の展望を、VSG相続税理士法人の古尾谷が取材した。

左から 森田 千晴様(ストライク)、山下 遼大様(ストライク)、桑戸 遊真様(日本M&Aセンター)、和田 梨沙様(日本M&Aセンター)

  • 左 株式会社ストライク コンサルティング部 ウェルスビジネス推進課 森田 千晴 様
  •   株式会社ストライク コンサルティング部 第八チーム チームリーダー / シニアアドバイザー 山下 遼大 様
  •   株式会社日本M&Aセンター 提携統括事業部 コンサルタント戦略営業部 西日本チーフ 桑戸 遊真 様
  • 右 株式会社日本M&Aセンター 提携統括事業部 コンサルタント戦略営業部 シニアコンサルタント 和田 梨沙 様

コンシェルジュと担当者の役割分担

まずは仲介会社の「担当者(コンサルタント)」と「コンシェルジュ」の方々に焦点を当てていきます。はじめに、「担当者」と「コンシェルジュ」の役割の違いからご説明いただけますか。

森田様(以下森田):我々コンシェルジュ(当社では「ウェルスビジネス推進課」)は業務の8割方を会計事務所様への訪問やフォローに徹し、残りの2割程度で対象企業様の対応を行っています。税理士の先生方には、「私たちが窓口になりますので、何か案件やご相談があればまずお声がけください」とお伝えしています。
また、私が課長を務める「ウェルスビジネス推進課」では提携する税理士協同組合の窓口もさせていただいています。

そして、そこから上がってきた案件を、実務部隊である担当者が引き継ぐということですね。

山下様(以下山下):おっしゃる通りです。さらに、ストライクでは担当者をソーシング別に、「ダイレクト(直接営業)ルート」「金融機関ルート」「証券会社ルート」「会計事務所ルート」の大きく4つの部署に分けています。
例えば、銀行などの場合は組織対組織のお付き合いになりますが、会計事務所の先生方の場合は、決裁権を持つ先生ご自身の「お人柄」や「個人の意思決定」に寄り添う必要があります。ソーシングによってアプローチの方法が全く異なるため、人材配置も明確に分けて行っています。

桑戸様(以下桑戸):弊社も、大きな役割分担は一緒です。コンシェルジュは新規開拓、つまり先生方とのファーストタッチを担当します。日本M&Aセンターと提携する際に、先生方には日本M&A協会に加盟していただくため、コンシェルジュは、まず入会のご案内から始めます。
そして、譲渡の相談や買収の具体的な話が上がってきた段階で、コンサルタントチームにトスアップし、そこからはコンサルタントがお客様と直接やり取りをする、という流れです。

「日本M&A協会」には、会費や入会金はあるのでしょうか?

桑戸:はい。月額3万円(税込)で「理事会員」として参画していただいています。これが提携させていただく上での条件となります。また、入会金という制度自体はありますが、実際には1件目の案件が成約した際にいただいています。

異なるアプローチの支援戦略

無料で提携できる会社がある中で、月額3万円の価値はどのようなところにあると思いますか?

和田様(以下和田):まず、この3万円は、一つの「覚悟」だとも思っています。中小企業が抱える社会的課題に対して、単なる紹介にとどまらず、事務所として組織的に取り組んでいくという決意の表れです。
コンシェルジュの役割は、以前は新規開拓や窓口業務が中心でしたが、現在はより深く踏み込み、潜在的な課題を顕在化させるお手伝いをしています。解決策がM&Aなのか、親族内承継なのか、あるいは不動産活用や、保険商品などの全く別の提案が必要なのか。そうした案件の掘り起こしだけでなく、そもそも事務所内でどう取り組むか、という仕組みづくりまでサポートさせていただくケースも多く、これは無料の範囲では提供できないサービスだと思います。
また、私たちは「支部会」や「次世代の会」「国際会議」「理事総会」「エリア別勉強会」等という形で、先生方の所属するエリアや、ご年齢、目的毎に集まる定例会も組織しています。質の高いコミュニティを運営するにはコストがかかりますが、いただいた会費を原資に、先生方が本当に欲しい情報を提供したり、「VCompass」という企業評価システムをご利用いただけるようにしたり、新たな取り組みへの要望にお応えしたりと、包括的なサービスを提供しています。
これらすべてを含めた価値として、3万円を設定させていただいています。

創業当初からの徹底的にフォローする姿勢が一切ぶれていないんですね。ストライクのビジネスモデルについても教えてください。

山下:私たちは、まずは無料で提携していただき、顧問先様のM&Aニーズが出たタイミングでご相談ください、というスタンスです。それが我々の営業活動そのものですので、そこへの投資は厭いません。無料で株価査定も行いますし、事務所の職員向けの勉強会なども開催しています。
ただし、特定のイベントに関しては、実費として会費が発生する場合はあります。

契約する際の料金体系で、大きな枠組みでの違いはありますか?

山下:一番分かりやすいのは、入り口の料金体系ですね。日本M&AセンターさんAは着手金が発生しますが、当社は基本合意(独占交渉権を付与するタイミング)の段階まで無料で進めさせていただく点が異なります。
着手金を無料にして一定期間走らせていただくことで、具体的な提案ができ、やっと譲渡の意思が固まるというケースは多いです。また、相手も見つかっていない段階で他のステークホルダーに「M&Aを検討したい」とぼんやりと相談するのはハードルが高いですが、買収候補先がいて、条件面も出ている段階であれば、具体的に相談ができます。入り口を無料にすることで、案件の推進力は確実に上がったと思います。

M&Aをもっと身近なものにするために、とにかく間口を広げているということですね。

桑戸:弊社はこれまで着手金ありでやってきました。着手金をいただく意味は、お客様の覚悟を確認するためだけではありません。
企業評価(株価算定)を行い、案件化するための資料を作成するには、1~2ヶ月の時間と専門家の人件費が発生します。私たちはプロフェッショナルとして、評価書作成と案件化完了という「役務」を提供していますので、その対価として費用をいただいている、という認識です。
ただ、M&Aの良さが金銭的なハードルによって提供できないのであれば、それはもったいないというご意見もよく分かります。ですので、着手金の有無に関わらず、お客様が喜んでいただけるサービスが提供できれば、それが一番だとは思います。その上で、「着手金のコスト以上の最高品質のものを提供してくれるなら依頼したい」と思っていただけるお客様には、当社とのお取り組みが合うのだと思います。
実際に、先生方が私たちを紹介してくださる時、「ここは信用できるよ」という形で伝えてくださる先生もいらっしゃいます。

提携している会計事務所数を教えてください。

和田:弊社は約1,070事務所(2025年12月現在)です。7割以上の事務所様が受託(提携仲介契約)以上のご実績を出されています。15名未満の事務所でも、半数以上は受託等の実績を出されています。先生方は意識が高い方も多いので、成約や受託に至らなくても、企業規模に関わらず何かしらのご相談をいただいています。
また、昨年度も150事務所を超える事務所様がご入会いただいており、最近はますますの盛り上がりを感じています。

森田:ストライクでは約3,000事務所と提携していますが、着手金などもないため、受託のハードルは低く設定されていると思います。

主にどのような支援をされているのでしょうか?

山下:現在、スタートアップのM&A支援に非常に力を入れています。先ほどお話しした4つのソーシングルートに加え、代表の荒井が直轄で管理している「イノベーション支援室」という部署を設けているほどです。
スタートアップ企業にとって、IPOだけでなくM&Aというイグジットの選択肢を提供し、企業成長を加速させることが目的です。

森田:例えば、魅力的なプロダクトや技術を持っていても、資金調達や展開力強化のためM&Aを考えるスタートアップは多いです。最近の事例ですと、上場会社による、完全個室型ベビーケアルームを製造・販売するスタートアップ企業の買収が成立しました。

お互いが認める成長戦略

そういったスタートアップの出口戦略支援もしているのですね。

和田:弊社では「産学連携」にも力を入れています。例えば神戸大学大学院様とは、2022年に連携大学院に関する協定や、中小企業のM&Aの研究・教育に関する包括連携協定を締結しています。
また、最近は大学生へ寄付講座を開講したり、小学生から高校生に対しても、日本経済の背景をお話しながら「M&Aとは何か」等をわかりやすく理解してもらうための出前授業なども実施しています。

桑戸:学生が自ら学ぶ学問としてM&Aが普及すれば、将来的に社会全体の理解度も上がり、もっとM&Aが増え、より良いM&Aが行われるようになるだろう、という考えです。

お互いに感じている「相手の強み」についてお聞きします。日本M&Aセンターから見た、ストライクのイメージや強みを教えてください。

桑戸:ストライクさんの「税理士協同組合(税協)」とのリレーション構築力がすごいと思います。全国の事務所が加入する税協から発信することで、ストライクさんが一気に知名度を上げていったスピード感には、本当に驚かされました。税協経由で、税理士先生からストライクさんに直接依頼や連絡が入るようになった、という事実は非常に大きいと思います。

山下:ありがとうございます。実際に、紹介からわずか半年で成約が決まった案件もありましたし、現在も3件ほど私の担当しているお客様と契約が進んでいます。全国には約3万3,000もの会計事務所がありますが、私たちのアプローチだけではすべてを回りきれません。そのため、税協というネットワークを通じて当社を知っていただくことは、とても効果が高いと思います。

森田:3万以上も事務所があると、「M&Aとはなにか?」から始まる事務所さんもいらっしゃるため、支部単位で勉強会を開催させていただくこともあります。そうした先生方は年配の方が多いのですが、逆に言えば「事業承継を考える年代のクライアント」を一番多く抱えていらっしゃる層でもあります。
今後も税協の力を借りて、もっとM&Aを広めていければいいなと思っています。

では逆に、ストライク側から見て、日本M&Aセンターの「ここがすごいな」と思う点はありますか?

森田:理事会員の先生は意識が高く、将来の可能性を感じて「顧客のために」と強く考えていらっしゃる方が多い点は、すごくいいなと思います。
また、専門用語を話しても、すぐに理解される知識レベルの高い先生が多い印象です。

山下:すべて日本M&A協会の勉強会や協会員として横のつながりがあるからこそだと思います。最近は、日本M&AセンターさんAと提携しつつ、当社とも付き合う、という先生も増えてきていますから、私たちもその恩恵を享受させていただいている状況です。

和田:ありがとうございます。先輩たちが長い時間をかけて作り上げてきた歴史のおかげで、先生方のレベルや意識が高く、常に新しい情報を収集しようとする方が多いと思います。会費を払って参加していただいているからこそ、理事会員としての「帰属意識」みたいなものも高いのかもしれません。

提携税理士が語る仲介会社との付き合い方

左 山本 秀樹様(アルファ税理士法人) 右 岡村 勇毅様(岡村勇毅公認会計士・税理士事務所)

  • 左 アルファ税理士法人 / 公認会計士山本秀樹事務所 / 株式会社アルファコンサルティング 山本 秀樹 様
  • 右 岡村勇毅公認会計士・税理士事務所 / S&Aコンサルティング株式会社 岡村 勇毅 様

それでは、ここから実際にストライク・日本M&Aセンターと提携している先生方にお話を伺っていきます。まずは自己紹介をお願いします。

山本様(以下山本):アルファ税理士法人の山本と申します。私は公認会計士として、かつて監査法人トーマツの名古屋事務所に勤務しておりました。そこから独立して、ちょうど丸25年が経ちます。監査法人時代の経験を活かし、独立後もIPO支援やM&A、デューデリジェンス、株価算定などの業務を行っています。名古屋・東海地区を中心に14名の規模で活動しています。

岡村様(以下岡村):岡村勇毅公認会計士・税理士事務所の岡村と申します。私は京都出身で、山本先生と同じく監査法人トーマツの大阪事務所で修行した後、税理士法人トーマツへ移り、約13年前、30歳の時に独立しました。独立当時は、「金融円滑化法」の関係で事業再生の案件が多く、地元の金融機関と連携して再生業務を中心に行っていました。

クライアントの規模感を教えてください。

山本:当法人は、個人事業主の方から上場企業まで幅広く対応しています。ただ、創業当初からIPO支援に力を入れてきた経緯がありますので、上場支援コンサルティングとして関与し、そこから現在も税務顧問を務めさせていただいている上場企業も何社かあります。業種も様々で、コンビニエンスストアや新聞販売店など、多岐にわたるクライアント様とお付き合いさせていただいています。

岡村:私の場合は、山本先生のところよりももう少し規模は小さいと思います。売上で言えば、例えば3,000万円から2億円ぐらいの規模感で、業務内容としても一般的な税務顧問業務が中心になっています。

M&Aを希望するクライアントは、売り手と買い手どちらが多いですか?

山本:売り手・買い手のどちらもいらっしゃいます。創業して25年が経ちますので、顧問先様の高齢化が進んでいるケースもあれば、すでに世代交代して若い後継者が活躍されているケースもあります。
最近では、顧問先の上場企業が積極的にM&Aで買いに動いているというケースも増えています。

岡村:私の事務所も、両方ありますね。これまでに売り案件が4件、買い案件が2件ほどあったかと思います。小規模ではありますが、「顔の見える関係性」をキーワードに事業承継支援を行っています。
DXやAIを活用した会計システムなどは最低限導入していますが、やはり最後はアナログな部分が大事だと考えており、そこを重要視しています。

ネットワークと共感が生んだ提携関係

山本先生はストライクと、岡村先生は日本M&Aセンターと、それぞれお付き合いを始めたきっかけをお聞かせいただけますか。

山本:提携しているM&A仲介会社は何社かありまして、その中の一つがストライクさんで、お付き合いは7〜8年ほどになります。契約のきっかけは、やはりネットワークを広げ、多くの情報を得たいという思いでした。「売り」と「買い」、双方の情報がたくさん集まらないと、マッチングはなかなか成立しません。1社だけの情報網では限界がありますので、情報収集のチャネルを広げるしかないと考えました。
また、大手のストライクさんであるという安心感に加え、社長の荒井さんが私と同じ公認会計士であり、大学の1学年違いということもあって親近感を抱いた、というのも正直なところです。

岡村:日本M&Aセンターさんとは10年ほどのお付き合いになります。元々は知り合いの税理士さんのところに営業があり、その方からの紹介で当事務所に来ていただいたのがきっかけだったと思います。当初、日本M&Aセンターさんには「大規模な取引ばかり扱っている」というイメージを持っていたので、うちのような小規模な事務所に来ていただいても良いのだろうか、と恐縮していたのを覚えています。そこからお付き合いが深まる中で、M&Aの重要性と、「意欲ある強い経営者がM&Aで事業拡大し、日本を元気にする」といった趣旨に共感し、喜んで提携をさせていただきました。

クライアントの開拓や情報提供について、M&A仲介会社とどのように連携しているのでしょうか。

山本:まず、当法人の顧問先リストの作成を行っています。「後継者の有無」や「事業承継の緊急度」といった判断軸を設け、担当スタッフに情報を入力してもらいます。その一覧表をストライクさんと毎月共有し、我々の限られたリソースの中で効率的に動けるよう、優先順位をつけて声かけや情報発信を強化している、といった形ですね。
また、毎月ではありませんが、ランチミーティングを開催していただき、食事をしながら情報交換も行っています。我々からの情報共有だけでなく、名古屋の担当者の藤森正次さんからもM&Aのプロとしてのアドバイスや、税理士とは異なる視点を共有いただいています。

藤森様:ランチミーティングなど、交流のきっかけとなるような企画やイベントを、我々からも色々とご提案させていただいています。山本先生には非常に積極的にご参加いただいており、通常業務以外にも日常的な会話の中から、少しでも案件の芽を拾い上げられれば、という思いで取り組んでおります。

岡村:うちは私を含めて7名の小さな事務所で、私が現場に出るのが中心です。ルーティンの業務は担当者に任せていますが、決算報告会などの重要な場面では私も同席しています。また、経営相談や税務相談などの複雑な案件は、私のところに相談にくるようになっているため、M&Aに関する情報はすべて私の頭の中にあります。それを担当の桑戸さんとのやり取りの中で共有していく形です。
山本先生のような担当先リストを作成し、毎月担当者とシステマチックにやり取りして……という仕組み化は全くできていない状況です。

桑戸:弊社としては、岡村先生は京都で最もM&Aに精通されている先生のおひとりだという認識を持っています。岡村先生は、クライアントとファミリー経営に近い距離感で、言いたいことをお互いに言い合える関係、言うべきことはしっかり言う関係値を築かれています。その中で、社長がふと漏らした不安に対して、先生が解決策のカードをいくつか切る。我々は、その選択肢の一部としてお付き合いいただいている、というイメージですね。

組織の成熟と個の勢いという対照性

提携税理士の立場から見た、各社の強みや使い分けについて教えてください。

山本:やはり各社それぞれに特徴があり、社風や文化の違いがあるなと感じます。ストライクさんの特徴は、代表をはじめメンバーが全体的に若く、トップの2名が公認会計士であるという点です。会計士ですので、企業の評価や見方というものを非常によく分かっている安心感があります。
現場のメンバーもエネルギッシュで、後継者不足という日本の社会課題に対し、この業界で使命を果たしたいという強い熱意を感じますね。M&Aはかなりハードワークですから、若さとエネルギー、そして情熱がないと務まらない仕事だと思います。ストライクさんには、特にそういった「エネルギー」を感じます。

岡村:日本M&Aセンターさんは「組織化・システム化」がしっかりされている印象があります。一方でストライクさんは、「個の力・マンパワー」で突破するような勢いを感じます。どちらも人として魅力的で、会社としても信頼しています。
私にとって顧問先は大事な「ファミリー」ですので、同じく大事なファミリーである仲介会社を紹介すべきだと思って、どちらとも仲良くさせていただいています。

山本:岡村先生のおっしゃる通りで、どちらも素晴らしい会社だと思います。私たちも同じ公認会計士ですが、会計士というのは意外とざっくりしているところがあるんですよね(笑)。ストライクさんはトップが会計士なので、そういった意味でガチガチに管理するというよりは、大きな視点で自由にやらせているのかな、という雰囲気を感じます。
対して日本M&Aセンターさんは、業界最大手の老舗ですので、きちんと仕組みを作り上げてきた成熟感があります。もちろん、三宅会長のエネルギーもまだまだ健在ですし、組織としての強固さも感じます。ストライクさんはトップがまだ若いですから、これからの伸びしろがいっぱいある、という感じでしょうか。

これまでストライクや日本M&Aセンターと関わった案件の中で、印象に残っているものはありますか?

山本:今までで一番短期間の成約案件として、デューデリジェンスの期間を含めても、わずか3ヶ月ほどで契約に至った事例があります。買い手は印刷業の会社が、Web事業へシフトしていく中で、関東エリアで良いWeb関連会社を見つけることができ、非常にスムーズに進んだ案件でした。
これは、相手先が従業員4名ほどの小規模な会社だったことが最大の要因です。Web関連の会社ですので、工場のような多額の固定資産がほとんどなく、資産評価にかかる時間が少なくて済みました。この案件を通じて、今はソフトウェアなどの「無形資産」の方が価値を持つということに時代の変化を感じましたね。

岡村:直近で日本M&Aセンターとご一緒させていただいた案件で印象的なのは、元々は顧問先からの紹介で、事業再生支援に携わった企業です。5代目のまだ若い社長様でしたが、「本当は別にやりたいことがあるんだ」と、ふと漏らした本音がきっかけとなり、M&Aの話が動き出しました。創業100年を超える京都の老舗企業だったので、「M&Aに対して抵抗感があるのではないか」という懸念もありましたが、いわゆるM&Aマリッジブルーは意外となかったように見えました。ただ、やはり内心では不安に思っていることもあったのか、桑戸さんから「社長、岡村先生と喋りたそうでしたよ」とよく言われましたね。
社長の心のサポートこそが僕たちの仕事だと思っていますので、桑戸さんと密に連携しながら進められたのが良かったのだと思います。桑戸さんのおかげで大成功の成約となりました。

桑戸:すでに岡村先生がオーナー社長と完璧な信頼関係を築かれていましたので、我々は単に案件を引き受けるというより、岡村先生と社長が望む未来を作るためのご支援をする、というスタンスで並走しました。結果、話が動き出してから約1年弱で無事に成約に至りました。

やはりM&Aの直前になって破断となるケースは多いのでしょうか。

岡村:私の経験した案件数はそれほど多くはありませんが、ほぼすべての案件で「マリッジブルー」のような状態は見られました。調印が近づけば近づくほど、頻繁に電話がかかってくるようになります。これまで苦労して築き上げられた会社を、いざ手放すということへの罪悪感なのか、あるいは喪失感なのか、感情的に不安定になるんですね。
当時の私の経営理念に「安心を与える」というキーワードがあります。会計や税務の話ではなく、一人の人間として寄り添うことが必要だと考え、「電話じゃなくて、直接会いましょうか」と声をかけたりしていました。

クライアントの不安を受け止めるのが、M&Aにおける税理士の一番大事な仕事の一つなのかもしれませんね。

AIでは代替できないM&A業界の展望

今後10年を見据えたとき、事業承継はどのように変化していくのでしょうか。また、M&A案件は今以上に増えていくとお考えですか?

山本:今はAIの時代になり、かつて我々が手作業で行っていた仕事の多くは、システム化されてきました。そして今や、生成AIがコンサルティングのような提案まで行い始める時代になりました。今後、税務申告を含めた作業的な業務は、ますます人間に代わってAIが行うようになると思います。
では、我々人間に何ができるのか、何をすべきなのか。それは、「人と人」が知恵を出し合い、事業を次世代へ引き継いでいくことだと思います。時代を創っていくのは、これからの子供たちや若い世代です。そう考えると、会計事務所やコンサルティング会社が担うべき役割として、M&A支援は極めて重要になってくるはずです。
特に日本は、人口減少、DXの遅れ、そして低い生産性という課題を抱えています。これらを解決するために、企業が整理統合されていくのは自然な流れです。その流れを支え、円滑な承継と再編を導くことこそが、今我々に最も求められている役割ではないかと考えております。

岡村:M&A支援には引き続き力を入れていきたいと考えています。「日本を元気にする」という私のビジョンを実現するためには、強い経営者を増やしていかなければなりません。そのために私たち地域密着型の会計事務所は、顧問先と顔の見える関係を築くことが重要です。課題を解決する以前に、まず課題を「共有・認識」できる関係性づくりを目指しています。M&A案件は、最初から「成約させよう」と狙うのではなく、あくまで信頼関係の結果として生まれるものです。世の中はDXやAIと騒がれていますが、顧問先との関係性づくりに注力するために、あえて「アナログ税理士」を目指しています。
私たちは地域の小さな会計事務所に過ぎません。だからこそ、日本M&Aセンターさんやストライクさんのような大手仲介会社の力を借り、レバレッジを効かせて、日本を元気にしていきたいと考えています。

M&A仲介会社から見て、今後この業界はどうなっていくと思いますか?

山下:事業承継のニーズは必ず起こり続けるので、M&Aの業界自体がなくなることはないと思います。実務的な作業は、AIで便利になる部分も増えます。しかし、経営者にとっては「自分の子供のように育ててきた会社」を譲渡するわけですから、その気持ちの部分へのサポートは、AIに取って変えられるものではありません。ですから、5年後、10年後も先生方と一緒にお仕事させてもらえる関係性は変わらないのかなと思います。

桑戸:私は、「会計事務所の先生がM&Aの主役であるべきだ」という考えを持って、ずっと取り組んでいます。これまでは、先生がお客様の最初の相談を受けて、税務的にも企業価値・財務的なアドバイスもしてあげられるのに、「相手探しだけができない」という状態が続いていました。
しかし今ではM&A支援サービスの「バトンズ」もできて、ネットを使って相手探しができますし、FAの会社も出てきています。我々の過去の案件からM&Aの知識を吸収していただいて、このM&A業界の5年後、10年後の中心に、先生方が自らお客様の支援をしていく……という状況になったらいいなと思っています。

税理士もAIなどで業務の効率化が進んでいるので、より「相談業務」へとシフトしてきています。将来的にM&A専門としてトータルサポートする事務所ができたら面白いですね。

桑戸:専門性もありますし、きっとそのスタイルで活躍される先生が出てくるでしょうね。事業承継型M&Aのピーク目安が2035年にクライマックスを迎えると言われています。まさに10年後を見据えて、M&Aの相談がまず先生のもとへ来るような体制づくりを、私たちもご支援させていただいています。
また、M&Aは企業が成長するための手段でもあります。単なる「事業承継」の解決策としてだけでなく、「成長戦略としてのM&A」という切り口で提案ができるかどうかが、今後重要になるのではないでしょうか。

左から、森田様、山下様、桑戸様、和田様

参加者プロフィール

森田 千晴 様
株式会社ストライク コンサルティング部 ウェルスビジネス推進課 3課 課長
山下 遼大 様
株式会社ストライク コンサルティング部 第八チーム チームリーダー / シニアアドバイザー
桑戸 遊真 様
株式会社日本M&Aセンター 提携統括事業部 コンサルタント戦略営業部 西日本チーフ
和田 梨沙 様
株式会社日本M&Aセンター 提携統括事業部 コンサルタント戦略営業部 シニアコンサルタント
山本 秀樹 様
アルファ税理士法人 / 公認会計士山本秀樹事務所 / 株式会社アルファコンサルティング
一橋大学社会学部卒業後、監査法人トーマツを経て、平成12年4月公認会計士山本秀樹事務所を開設。平成15年株式会社アルファコンサルティングを設立、代表取締役に就任。大学での講師、会計監査、地方公共団体の外部監査、株式公開、法人税務、事業承継等の分野で実績多数。
岡村 勇毅 様
岡村勇毅公認会計士・税理士事務所 / S&Aコンサルティング株式会社
同志社大学を卒業後、平成18年に監査法人トーマツに入社し、公認会計士資格を取得。監査部門にて、上場準備会社から上場会社まで幅広い規模・業種の監査業務を担当。その後、税理士法人トーマツに入社し、税理士資格を取得。中小企業の税務顧問から、国内・クロスボーダーのM&Aまで幅広い案件に従事。平成24年10月に岡村勇毅公認会計士・税理士事務所を設立。

企業情報

会社名
株式会社ストライク
事業内容
M&A仲介・アドバイザリー事業
会社名
株式会社日本M&Aセンター
事業内容
M&A仲介・アドバイザリー事業、日本M&A協会の運営