昨今、生成AIやDXの波が激しく押し寄せ、単純な入力業務の自動化が進む中、先進的な会計事務所やベンダーはどのような未来を見据えているのか。全国7拠点・130名規模へ急成長を遂げる税理士法人リライトは、AI-OCRツール『TaxSys(タクシス)』を繁忙期にフル活用し、爆発的な業務効率化とコスト削減に成功したという。業界未経験の新人スタッフがひとりで30人分のデータ化を完遂した背景、そしてAI時代にこそ価値が高まる税理士の人間力の本質について、TAX CONNECTIONの税理士・古尾谷が取材した。

- 左:税理士法人リライト 代表社員 大平 耕介 氏
- 右:税理士法人リライト 池袋事務所代表 溝口 桃子 氏
目次

組織拡大を続けるリライトが掲げる理念と人を重んじるカルチャー
リライトさんは現在、全国に何拠点ほど展開されていますか。
大平:水道橋、池袋、恵比寿、横浜、湘南、いわき、福岡の7拠点になります。
スタッフの方も増えている印象ですが、今何名ほどですか。
大平:130名ほどになりました。
社員の皆さんが非常に活気がある印象です。何か特徴的な社風や理念があるのですか。
大平:当社は何よりも「人」に一番重きを置いている組織です。創業者の瀬谷の時代からずっと変わらない方針なのですが、最近は特に「コンパッション(思いやり)」を大切にしています。人とのつながりや感謝の気持ちを重要視しているので、それがメンバーの活気や組織の雰囲気に繋がっているのだと思います。
組織が拡大していく中で、今後のビジョンはどのように描いていますか。
大平:私が代表に就任して今年で5年目になります。任期を10年と考えているので、ちょうど今が交代への折り返し地点です。そのため、今年1年をかけてこれからのリライトをどうしていくか、事業計画を改めてブラッシュアップしているところです。これまでのやり方から新しい形へと変えていくタイミングとしては、ちょうど山場を迎えていると感じています。
昨今、AIの波が激しく押し寄せていますが、貴社としてはこの潮流をどのように捉えていますか。
大平:まずはAIと共存することが大前提ですね。自分たちが使いこなせなければ意味がないので、今日も社内で30分ほどの研修を行っていました。まずは税理士事務所としてAIを当たり前に使えるようになることが第一歩です。その一方で、AIが進化すればするほど、最終的には「人間の価値」が上がってくるはずです。今後はその人間ならではの部分を、より強固にしていこうと考えています。
新ツールによる業務効率化の実感
貴社ではAI-OCRツール『TaxSys(タクシス)』を導入し、確定申告業務で大幅な時間削減を実現されたそうですね。どのような経緯でTaxSysを導入されたのでしょうか。
大平:元々同様の仕組みを社内で構築したいという構想があり、IT部門にも相談をしていたところでした。そんな時にSoLaboさんにTaxSysの導入をご提案いただいたのですが、まさに私たちが作りたかった構想そのものであり、しかも完成度は遥かに先を行っていて驚きました。自社でゼロから開発するよりも、TaxSysを採用した方が圧倒的に早いと判断し、導入を決めました。
全社で確定申告の件数はどのくらいあるのですか。
大平:全体で約2400件ほどになります。給与所得のみの方などもいらっしゃいますし、内容はさまざまです。
それだけの件数があると、以前は相当な残業が発生していたのではないですか。
大平:そうですね。どうしても時間がかかりすぎてしまうため、以前はやむを得ず業務を絞り込んだり、一部お断りせざるを得ないケースもありました。
そんな中で、今回はTaxSysを導入して確定申告業務に臨まれたわけですね。
大平:確定申告本番に向けて、今年の1月頃から試験的に導入を始めました。直感的で非常に使いやすい設計だったため、スムーズに実務へ定着しました。結果として、かなりの処理件数をこなすことができました。
溝口:今年の確定申告期は、TaxSysを導入している事務所の中でも、当社が最も活用していたのではないかと思います。(税理士法人リライト全体で3月に約10万仕訳、2週間で約8万6,000件の取引データを処理)
以前使用していたAI-OCRツールと比較して、何が一番大きな違いでしたか。
溝口:従来のツールは、データを依頼してから結果が返ってくるまでにどうしても丸一日ほど待つ必要がありましたが、TaxSysにはそのタイムラグがありません。「今日中に処理したいけれど、仕上がりが明日になってしまう」という焦りがなくなったことが、社内での利用頻度を一気に押し上げた要因だと思います。
コスト面でも、昨年の2025年3月については、従来ツールに150万円ほどお支払いしていたのですが、2026年3月については約40万円にまで抑えられ、コスト削減へと繋がりました。
大平:金額的なメリットはもちろんですが、「これほど簡単にデータ化できるんだ」という成功体験を積めたことで、スタッフが処理するデータ量自体が確実に増えましたね。「まずはTaxSysに投げてみよう」と現場が積極的に動けるようになったので、単純な費用比較以上の価値があったと感じています。
業務が効率化されたことで、社内の働き方にも変化はありましたか。
溝口:TaxSysを導入してからは、全体の残業時間が目に見えて減りました。ただ、うちのスタッフはみんな本当に働き者なので、業務が効率化されて時間が浮いた分、また別の仕事を頑張ってしまうところもあるのですが(笑)。
大平:全体的な傾向として、早く帰る人が確実に増えましたね。もちろん、たくさん働きたいという熱意のあるメンバーは残ることもありますが、そこを除けば、事務所全体の平均残業時間はグッと下がりました。
導入時の現場の反応
メインの会計ソフトは何を使っていますか。
大平:特定のソフトに偏っておらず、比較的均等に分散しています。TKCが3割、マネーフォワードが3割、残りの4割が弥生会計とその他という構成になっています。
それはお客さまのニーズに合わせて選ばれているのですか。
大平:お客さまからのご要望はもちろんですが、従業員の好みによる部分も大きいです。もともとお客さまを幸せにするのは会計ソフトではなく使用する私たち人間という考え方で、良い意味で特定の会計ソフトへのこだわりがありませんでした。その影響で「現場が使いたいものを自由に選んでいいよ」という社風がずっと続いています。例えば、溝口が統括している池袋支社はほぼすべてマネーフォワードに切り替えているなど、各拠点のトップが「これがいい」と判断したものに自然と寄っていく傾向もありますね。
130名ものスタッフを抱える大きな組織となると、今回のような新しいツールの導入にあたって現場からの拒否反応などはなかったのですか。
大平:それはもう、ものすごかったですよ(笑)。「なぜ一番の繁忙期に、わざわざ新しいツールを入れるんだ」と猛反発を受けました。ですが私は逆に、「今この大変な時期だからこそフル活用できるし、従来ツールとの比較も明確にできる。大変なのはよく分かるけれど、まずはやってみてくれ」と押し切りました。
溝口:支社によって活用度合いに少し温度差があった印象です。例えば横浜支社は、3月の時点ではほぼ使われていませんでした。単純に使い方がまだ浸透していなかっただけで、やり方さえ分かればみんな使うはずなのですが、「よく分からないから、とりあえず今は慣れている従来のやり方でこの忙しさを乗り切ってしまおう」となってしまったのです。やはり、実務の中で半ば強制的にでも触る環境を作らないと、新しいツールはなかなか浸透しないのだと痛感しましたね。
大平:そこで業務を集中させるために、立ち上げたばかりで比較的手の空いていた福岡支社へ、確定申告の読み込みデータを集約したんです。そして、今年1月に入社したばかりの、業界未経験の新人スタッフにスキャンからチェック業務まで一通り任せました。TaxSysがパッと出してきた仕訳の結果に対し、「これはどういう意味?」とGeminiに質問しながらやり取りを重ねて精度を上げていく。単にスキャンして終わりではなく、その先のAIの使い方まで未経験のスタッフが実務の中で勉強できたことは、組織としても非常に大きな収穫でした。
今年1月に入社したばかりの、業界未経験の新人スタッフにこのツールを任せてみたところ、YouTuberのお客さま約30人分の領収書をすべて1人でデータ化し、最後までやり切ってくれました。税務や会計の知識がまったくない状態で、それだけの実績を出せたわけですから、誰にとっても非常に使いやすいシステムなのだと実感しています。
ユーザーの声で進化し続けるTaxSysの開発思想

- 左:株式会社SoLabo 代表取締役 田原 広一 氏
- 右:株式会社マネーフォワード 事業推進本部 士業パートナーマーケティング部 部長 小高 将 氏
開発側の田原さんに、TaxSysの開発経緯についてお伺いしたいです。
田原:私たちの会社にも税理士事務所があり、元々は自社の生産性を上げるため、社内エンジニアと開発したのが始まりです。これを他の会計事務所にも展開すれば、業界全体がポジティブになると確信してからは、TaxSysの開発にフルコミットしてきました。
以前から税理士業界を見ていて、多くの事務所が会計ソフトに入力した「後」のデータ活用ばかりに目を向けがちという点に違和感を持っていました。しかし、本当に重要なのはその1個手前、つまり保険の加入状況やM&Aニーズ、日々のヒアリングシート等の「生の顧客データ」の活用です。
私たちはまず、一番コストと工数がかかっている「証憑のデータ化」という部分最適から着手しましたが、最終的なゴールは事務所の全体最適です。各種クラウドツールとの連携を一つずつクリアしていくことで、生産性向上だけでなく、将来的には最大90%ものコスト削減を実現できると考えています。
TaxSysのコンセプトはどこにあるのでしょうか。
田原:一番分かりやすく言うと、AI-OCR(文字認識)機能と、CRM(顧客管理)機能が、一つのツールとして統合されているという点です。より広い視野でコンセプトを言えば、「Google Workspace(以下、GWS)の価値を最大化するツール」です。GWSをフル活用して事務所全体の最適化を目指しています。
ユーザーの先生方からいただいた改善のご要望についても、積極的に反映されているのでしょうか。
田原:可能な限り迅速にアップデートへ反映させていただいています。もちろん、あまりにニッチなご要望は見送りますが、2〜3割の方から同様の要望があれば、潜在的に同じように困っているユーザーが多いということなので、積極的にアップデートし続けています。
CRM自動化と蓄積データ活用の思想
TaxSysのCRM(顧客管理)機能についても、詳しく教えていただけますか。
田原:Googleドライブやカレンダーのデータをそのまま活かして、自動で顧客管理ができる点が圧倒的な強みです。例えば、スタッフがGoogleドライブに各種届出書を保存した瞬間に、TaxSys上の顧客一覧画面に自動で反映され、クリック一つで該当ファイルへジャンプできるようになります。どこに何が保存されているかが一目で分かります。
さらに、Google MeetでのWeb面談の録画や文字起こしデータもすべてカレンダー経由で自動紐付けされるため、スタッフが手作業で日報を書く手間を限りなくゼロに近づけることができます。手入力に頼るのではなく、すでに存在するデータから連携することで、書かなくていい顧客管理を実現するのが、私たちの目指す理想形です。
今後はこの溜まったデータを活用して、攻めの提案を行うことも可能になるのでしょうか。
田原:はい、人間が提案するためのサポートは十分に可能だと考えています。例えば、年末調整の時期というのは、顧問先の全従業員から「最新の生命保険や住宅ローンの情報」を回収できる最大のチャンスです。もしこの作業を完全に自動化し、全従業員の保険加入データなどが瞬時にデータ化されたら、TaxSysの画面上で「A社:生命保険未加入の従業員リスト」などが優先順位つきで一目で確認できるようになります。そのデータを基に付加価値の高い提案を顧問先に持っていく、という流れを年内には必ず形にしたいと考えています。
マネーフォワードが見る先進性
マネーフォワードさんも、現在AIを活用したさまざまな新機能を開発中だと伺っています。
小高:はい。高度な生成AIを使いこなすには、どうしても開発者的な素養や知識が必要とされるのが現状です。それを「誰もが簡単に使える形」にするために、私たちは8月に提供開始予定の『マネーフォワード AI Cowork』をはじめ、様々なプロダクトを開発しています。
それは、他の外部システムとも連携していくようなイメージでしょうか。
小高:おっしゃる通りです。例えば、ベースのデータ保存場所としてTaxSysがあり、その上で私たちのAIエージェントを動かして連携していく、という世界観も十分に可能です。TaxSysのような素晴らしい外部プロダクトのデータ基盤と組み合わせることで、さらに強力な付加価値を生み出せると思います。
マネーフォワードでは外部システムと自由に繋ぎ込めるようにAPIを一般公開しています。各事務所の皆さんがお気に入りのツールを自由に選び、それらがストレスなくシームレスに繋がる世界を作ること。それこそが、私たちが目指している未来の世界観ですね。

【データ×AI×人間力】勝ち残る事務所に必要な「泥臭さ」
AIによって業務が効率化され、生まれた空き時間をどう活かしていくか、リライトさんではどのような戦略をお考えですか。
大平:当社は今後、クロスセルや顧客単価の向上に注力していきます。AIがこれだけ発達した以上、これまでの記帳代行のような単純作業だけでは稼げなくなるのは当然です。だからこそ、人間にしかできない部分で付加価値を生み出し、売上を作っていく仕組み作りに時間を費やさなければなりません。
これは今後の採用戦略にも直結します。これまで以上に入力専門スタッフなどの間接人員の必要性が薄れていくため、戦略的にその層の採用を抑制するなど、先を見据えた長期的な組織戦略を組んでいくつもりです。
顧客側もAIの進化を理解しているため、これまでの顧問料を維持するのが難しくなるのではという懸念もありますが、その点はいかがでしょうか。
溝口:当社はもともと、作業の工数(時間)ベースで料金を決めるという売り方をしていません。記帳業務を前面に押し出すスタイルでもないので、AIによって生産性が上がったからといって、顧問料を下げなければならないという話にはなりにくいと思います。
大平:むしろ、私たちは今年から適正な値上げをお願いしていこうというタイミングにあります。AIの進化によって売上が減るといったリスクは、現時点では全く想定していません。
会計事務所の「忙しくてきつい」というイメージも大きく変わりそうですね。
田原:これからは、AIを武器として賢く使いこなしながら、人間味のある泥臭いコミュニケーションで顧客満足度を上げていける事務所が、圧倒的に成長していく時代になると思います。「データ×AI×人間力」が三位一体になっているような事務所ですね。
逆に、これまでのやり方に固執する古き良きスタイルの事務所は、採用力も集客力も低下し、少しずつ厳しい状況に追い込まれていくのではないでしょうか。
大平:田原さんのおっしゃる「泥臭さ」というキーワードには、非常に共感できます。AIがどれだけ発達して情報が溢れる時代になっても、最終的に経営者が求めるのは「誰からそのサービスを買うか」「誰と一緒にこの会社を経営していきたいか」という人間同士の信頼関係です。選択肢が無数にある時代だからこそ、人間味や泥臭いサポートを強みにしている事務所が、結果として選ばれやすくなるはずです。
これは相続実務などでも同じですよね。遺産の分割協議をAIにすべて委ねるかと言われれば、絶対にそんなことはありません。親族間の感情の縺れを紐解き、まとめるのは、税理士の「人間力」であり、泥臭いコミュニケーションです。AIができることと、人間にしかできないことのメリハリが、今後はより一層明確になっていくのではないでしょうか。
AIによる効率化と高度なデータ連携によって、税理士事務所が真の「経営パートナー」へと進化していく未来が非常に楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
参加者プロフィール
- 大平 耕介 氏
- 税理士法人リライト 代表社員
2011年に副社長、2016年に横浜事務所代表に就任し、初の支店設立と組織拡大を牽引。2020年より総代表社員を務める。横浜での「独立」と、総代表としての「2代目」という双方の経験・視点を併せ持つ。現在はグループ全体のさらなる発展と、持続的な組織拡大に大きく寄与している。 - 溝口 桃子 氏
- 税理士法人リライト 池袋事務所代表
社会人未経験の新卒としてリライトに入社。実務を学びながら2016年に税理士試験に官報合格し、2019年に社員税理士に就任した。現在は地元・池袋の事務所代表を務め、組織の発展に貢献。「未経験から責任ある立場へ」という自身の成長ストーリーを体現し、地域に根差した中小企業の成長支援に尽力する。 - 田原 広一 氏
- 株式会社SoLabo 代表取締役
TACで財務諸表論講師5年。2015年株式会社SoLabo(ソラボ)を設立。2025年税理士法人SoLaboを設立。融資・補助金支援実績10,000件超。自社の経験を税理士業界に還元するサービスをスタート。税理士向けサービスとしてTAXGROUPというボランタリーチェーンを展開。 - 小高 将 氏
- 株式会社マネーフォワード 事業推進本部 士業パートナーマーケティング部 部長
国内大手メーカーに新卒入社後、2019年にマネーフォワード入社。九州・沖縄支社にて士業事務所向けのパートナーセールス職を3年半経験。その後本社に異動し、新規セールスのリーダー職を経て、現職の士業事務所向けマーケティング部の部長として、士業事務所様と共にクラウドを活用した中小企業の生産性向上に従事。
企業情報
- 項目
- 詳細
- 企業名
- 税理士法人リライト
- 事業内容
- 税務・会計・確定申告支援。AI-OCRツール「TaxSys」を活用した月次記帳業務の自動化・効率化を推進。全国7拠点130名体制
- サービス対象
- 個人・法人の確定申告、税務顧問、記帳代行















