次世代育成を見据えた会計事務所の採用戦略

士業・管理部門に特化した転職支援プラットフォームを提供する株式会社ヒュープロ。その会社が存続の危機に瀕した際、命運を託したのが顧問税理士であった。創業社長に、専門特化に至った経緯と、事業の危機を乗り越えて見出した、会計・税理士業界の未来に対する熱い思いについて伺った。さらに、同社を活用し採用活動を行う株式会社柏野経営の柏野専務へ、地方における人材採用の現状と、人材紹介会社の活用について、VSG相続税理士法人の古尾谷が取材した。

株式会社ヒュープロ 代表取締役 山本玲奈様 HR事業部コンサルタント 天本健二郎様 株式会社柏野経営 専務取締役 柏野真吾様

  • 中央 株式会社ヒュープロ 代表取締役 山本 玲奈様
  • 右 株式会社ヒュープロ HR事業部コンサルタント 天本 健二郎様
  • 左 株式会社柏野経営 専務取締役 柏野 真吾様

「良い顧問税理士がいれば生き延びられる」ヒュープロ創業ストーリー

今年はCMも放映され、積極的にプロモーション活動をされていますが、ヒュープロを立ち上げた経緯を教えていただけますか。

山本:大学4年生の時に起業しました。元々は国際的な弁護士を目指して司法試験の受験勉強をしていたんですが、そのロースクール費用を自分でねん出するため、ビジネスコンテストに出場したのがきっかけです。ビジコンで事業を形にしていく面白さに強く惹かれ、「こうなればいいのに」という日常の課題を即座に形にできることに魅力を感じました。その結果、受験勉強をやめ、会社を立ち上げました。

弁護士を目指したことから始まったんですね。そこから現在の転職支援の事業はなぜ始められたんですか?

山本:自分自身が司法試験の勉強をしているときに感じた課題がもとになっています。当時、弁護士の求人情報は限定されたクローズな場所にしか掲載されておらず、就職活動の情報収集にとても苦労する状況でした。そこで、「もっと情報がオープンになれば、四大事務所だけでなく、自分が活躍できるところで働きたいという司法修習生とのマッチングが効率的に生み出せるのではないか」と考え、弁護士の就職情報サイトを最初に始めたんです。そこから、営業活動のために弁護士事務所にお伺いする中で、税理士とワンストップの事務所が多く、先生方から「税理士の採用の方が困っている」という相談を受けるようになりました。「それなら税理士の方向けも始めてみましょう」ということで、税理士バージョンのサービスを開始しました。

その後、会計事務所や経理人材なども始められたんですね。

山本:そうです。そこからサービスをリニューアルしたんですが、コロナ禍前の2019年頃に組織崩壊と資金ショートの危機に陥りました。これは、私が社員に対して会社の方向性を示さなかったことが大きな要因です。

どのように危機を乗り越えられたのですか?

山本:VCから資金調達は決まっていたものの、契約締結に向けた手続きやデューデリジェンスが長引き、キャッシュが2ヶ月後にショートしてしまうという倒産寸前の状況で、様々なスキームを考えてくれたのが顧問税理士の先生だったんです。年末年始返上で対応してくれました。無事に延命できたことで、「良い顧問税理士がいれば、もっと多くのスタートアップ企業が生き延びられる」と強く感じました。同時に、当時の当社の管理部門の機能が整っていなかったために、先生に多大な負担をかけてしまい、「管理部門が整っていれば、会社存続の危機をもっとスムーズに乗り越えられた」と痛感しました。この経験から、税理士・管理部門に対するサービス強化と、生き延びた感謝を業界に返していくことを強く決意しました。

延命後はどのように成長していったのでしょうか?

山本:私自身が「営業部長」を名乗り、積極的に税理士の先生に会いに行くことにしました。世の中がコロナ禍で営業をストップさせる中、残った社員5人でフルに営業活動をしたんです。今まで会えなかった税理士の先生方とお話でき、結果的にお客様が増えました。

採用後の定着まで伴走支援を

今後の目標や、新しく考えていることはありますか?

山本:会計業界が採用を加速させ、各社が採用力の強い会社になっていくことは重要です。しかし、近年日本の労働市場は、人口減少によって採用競争率が上がっています。結果として候補者の集客にかかる費用もどんどん上がっており、それに伴って採用サービスの提供金額も上昇すれば、双方にとって持続が難しくなります。だから採用の次は、社員の定着率、働き方、働く意義を、他の活気ある事業会社と並ぶか、それ以上にしていくことが、業界をさらに強くする鍵だと考えています。採用後の定着まで伴走し、社員が自社のために頑張ろうと思えるような環境作りを、会計事務所の皆様と作っていけたらと思っています。

所長先生方と関わると、人材以外の問題も相談される中で、業界の役に立ちたいという思いが強くなるのはよくわかります。

山本:私は、会計事務所には高いポテンシャルがあると思っています。きちんと運営すれば利益率が高いですし、企業にとって税理士の存在は不可欠であり、日本の経済をそのまま引き上げる仕事です。だからこそ、ビジョンやミッションを作りやすく、仕事のやりがいや意義付けもしやすい。報酬も上げやすい、本当に素晴らしい業界だと感じています。

金沢の採用現場から見る「人材紹介会社」の必要性

金沢の採用現場から見る「人材紹介会社」の必要性

ここからは、ヒュープロを利用されている株式会社柏野経営の柏野先生と担当コンサルタントのヒュープロ天本さんにお話をお伺いしたいと思います。まず、御社の紹介からお願いします。

柏野:金沢で父が創業してから今年で40年を迎え、2年前に兄が社長、私が専務として事業を引き継ぎました。従業員は現在24名です。

お父様から承継され、なにか変革などされましたか?

柏野:はい。兄と私は40代半ばで承継をスタートしたのですが、幹部社員は年上のため、次世代の育成が急務だと考えました。現在、30代の男女2名にマネジメントを担ってもらうべく、教育しています。彼らが力を発揮するには、必然的にさらに若い層の採用が必要です。しかし、私たち世代の20代半ばの頃の働き方と、現代の考え方は全く異なります。「これは絶対に働き方を変えていかないとまずい」という問題意識から、現在、試行錯誤を続けている状況です。

ベテラン社員の方々も残られている中で、若手社員の方たちとの世代間の融合は難しそうですね。

柏野:そうなんです。幹部社員は50代半ばぐらいですし、最近ヒュープロさんからご紹介いただいた男性社員は24歳です。現場では30代半ばの課長が中心となり、毎週、進捗確認の会議を主導して実施してくれています。

現在人材採用には、どのような媒体を使っていますか?

柏野:一番は人材紹介会社です。あとはハローワーク、自社の採用ページですね。

地方では人材紹介会社を利用している会計事務所は少ないそうですね。

天本:私たちのもとには候補者様はご登録いただくのですが、紹介する事務所様が少ないという点に困っています。「人材紹介は高い」というイメージが、まだ根強くある事務所が多いのが現状です。

採用にかかるコストをかけられないというのがあるのでしょうか。

天本:規模感にもよって変わりますよね。個人事務所などですと、どうしても費用をかけられないため、求人サイトやハローワークしか利用しないというところが非常に多いと感じます。

今、会計人材の人気はどうですか?

天本:かつてはイメージが低迷していましたが、それと比較すると持ち直してきていると感じます。ただ、世間的には経理などの事務系の仕事というイメージが強いため、「事務系=働きやすそう」という若い人が多い印象ですね。

その層は、我々が求めている、成長意欲の高い層とは少し反するところもありますね。

柏野:そうですね。私たちが求めるのは経営者と対等にやり取りできる人材ですから、プレッシャーやストレス耐性など、入社後のイメージギャップが生じる可能性はありますね。

天本:そのイメージギャップを、事前に丁寧に噛み砕いて説明するのも我々の重要な役割です。特に、繁忙期は一定の残業があることや、常に勉強が求められる覚悟、そこはあらかじめ知っておいてくださいね、という形で、どの候補者様にも伝えるようにしています。

求人サイト経由だと、実像が十分に伝わらないまま面接に進むのに対し、人材紹介会社が事前に説明してから紹介してくれるのは、採用において大きなプラス要素になりますね。求人サイトと人材紹介会社を利用する求職者の層には違いがあるのでしょうか?

天本:弊社ではキャリアアドバイザーが候補者様と直接お話しし、その方の強みや改善ポイントなどを丁寧にスクリーニングさせていただいています。そういったプロセスを経ている分、求人サイトを利用した方と比較して、信頼性が高いと言えます。

ヒュープロを活用する理由「業界理解の深さ」

人材紹介会社は多数ありますが、その中でヒュープロを利用している理由はありますか?

柏野:やはり会計業界に特化した専門性に強く惹かれたからです。他の人材エージェントの方と話すと、私たちの業界を知らないので、一般事務や経理経験者を紹介してくれるんです。もちろん良い人材なのですが、「良いんだけど、ちょっと違うんだよね」という話から始まってしまうことが多くて。

業界理解がないと、その人材に仕事の魅力や業務内容をちゃんと伝えてくれないですもんね。

柏野:そうなんです。「会計事務所に就職したい」という人、もしくは「柏野経営に就職したい」という人が欲しいのに、「経理職を希望したのに説得されて受けに来ました」という人が来ることもあります。最初にボタンをかけ違ってしまうと、最後までうまくいかないというのはよくあります。業界のことを分かっていて、当社のことも理解していただいた上で、「こういう人材だったらどうですか」と言っていただける方が、大変ありがたいですね。

ヒュープロには会計業界未経験の方が多く登録されているとのことですが、会計業界の魅力はどうやって伝えているんですか?

天本:例えば、クライアント企業を通じて、さまざまな業界のビジネスを深く理解できる点や、税理士を目指している方でしたら、一般企業よりも税理士受験に協力的である点を強調しています。そういった強みなどを説明し、会計業界への魅力付けをさらにプラスオンしています。弊社は会計業界に特化しているため、登録される時点で業界についてある程度調べている方が多いので、その魅力を補強するイメージですね。

候補者に企業の特徴を伝える時は、どのような点を重視して伝えていますか?

天本:働きやすさや、職場の雰囲気、そして働いている方々の人間性です。「社員の方々も良い人が多いですよ」というような、働く環境や人柄に関する話をすることが多いです。

採用者の定着の課題と紹介会社の心強さ

ヒュープロからの紹介で採用した方は何名いますか?

柏野:2名です。1名はもうすぐ丸1年になります。もう1名は最近採用しましたので、まだ試用期間中ですね。

入社から1年経つ方の活躍ぶりはいかがですか。

柏野:すごく助かっていますよ。習得も早く、素晴らしい人材です。前職が大企業だったので、これまで受けられてきた教育の質の高さが、日々の業務の端々から伝わってきます。

大企業と比較すると、どうしても条件面に差が出てしまうかと思います。その点はどのようにクリアされたのでしょうか。

柏野:条件面の違いはあっても、「柔軟な働き方ができる環境」を高く評価していただけました。ご本人から「将来的にライフステージが変化しても、ここなら一緒に働き方を考えてくれそうだと感じた」と言っていただけたのは嬉しかったですね。新しい働き方の仕組みを整えていくことは、その方のためだけでなく、他の社員にとっても働きやすい環境を作る良いきっかけになると思います。

柏野経営さんでは、定着具合はどうですか。

柏野:離職が激しい年とそうじゃない年があります。2022年に3人辞め、今年も3人辞めていますので、やはり定期的な離脱はあると感じています。今年は本当にドミノ倒しのように似たような時期に集中して辞めてしまったため、他の社員に負担をかけてしまったという反省点があります。ただ、入社から3年を超えてくれれば、その後も長く在籍してくれる傾向はあります。やはり私たちのような20〜30名規模の事務所は、組織効率が一番悪いと言われています。辞める人がいると、その担当の引き継ぎなどで周りが疲弊します。そういった組織的な不安を埋めるために、新しい人材がすぐに入ってくるというのは、精神的にもプラスになります。

そういった緊急の状況において、紹介会社は心強い存在ですね。

天本:「今すぐに欲しい」という緊急性の高いタイミングで候補者様をご紹介できるのは、私たちの大きな強みです。求人広告などでは、すぐに対応するのはなかなか難しいため、多くの事務所様から助かっているというお声をいただきます。

柏野先生から見て、ヒュープロは相談しやすいですか?

柏野:そうですね。まず、会計業界のことを深く理解されているというベースがあるので、担当の方が変わっても話が早いという点があります。また、皆さん非常に積極的ですよね。弊社のことを知ろうとしてくれますし、「こんな人材はどうですか」と、ポイントを説明しながら提案していただけます。私も当初、東京の会社なのでコミュニケーションの取り方を懸念しましたが、地域差のようなものは全く気になりませんでした。

「求める人材」を明確化し、数字で示す

「求める人材」を明確化し、数字で示す

柏野先生が考える、地方事務所でもできる採用戦略についてお話しいただけますか。

柏野:私たちの場合、若い社員を採用しようと決めたからこそ、そのためには待遇などを明確に打ち出さなければならないというところにたどり着きました。「働き方が良い」「事務所の雰囲気が良い」といった表現は抽象的なので、それを具体化する必要がある。そこで、「どういう人を採用したいのか」というターゲットを明確に決め、その人たちに伝わるように、数字で示すことを始めました。残業時間や有給休暇消化率、男女比率、年代ごとの人数構成などをグラフにしたり、パンフレットで見せられるようにしています。結局、私たちが求める人材像を明確にできていない状態で採用を進めてしまったことが、後々のミスマッチに繋がったのだと今では反省しています。まず採用したい層を明確に決めるというところが、スタート地点として一番重要だと感じています。

最後に、読者の税理士、特に人が採れないと悩んでいる先生方にメッセージをお願いします。

柏野:私たちも変革の最中なので恐縮ですが、より良い採用の方法は必ずあると思っています。例えば、ヒュープロさんにオフィスツアーを実施したら良いと助言されたので、すぐに実行しました。以前は私が一次面接を担当していましたが、現場の社員にも同席してもらったり、適性診断を導入したりと、第三者的な視線を入れて少しずつプロセスを変えています。これに正解はないと思っていますので、採りたい人材を確保するためのやり方を常に考え、実践していくことが大切だと感じています。

最後に、山本社長からも税理士に向けたメッセージをお願いします。

山本:地方の人材もたくさんご登録いただいておりますので、是非ご利用いただきたいです。まだ人材紹介会社を使ったことがないという事務所さんも多いと思いますが、商談・お打ち合わせをするだけでしたら無料です。まずは当社からの紹介を受けてみて、どのような人材が来るのか、他の求人媒体と比較検討していただいても良いと思います。また、私たちが業界の魅力を世の中に伝え、候補者様にご登録いただくことは当然ですが、同時に各事務所さんが「良い事務所」になっていくことが重要です。そうすることで、採用した社員は定着し、成長し、結果として事務所全体の向上につながります。その良いサイクルを全国のスタンダードにしていくこと。それが、次の会計業界の新しい組織のあり方だと考え、そこに貢献していきたいと思っています。

参加者プロフィール

山本 玲奈 様
株式会社ヒュープロ 代表取締役
インドネシア・アメリカなど18年の海外生活を経て、大学在学中の司法試験の勉強やビジネスコンテストへの出場をきっかけに、2015年11月に株式会社ヒュープロを設立。「アジアを代表する会社を作る」というビジョンの実現に邁進するとともに、女性起業家を増やす活動にも力を入れている。
天本 健二郎 様
株式会社ヒュープロ HR事業部コンサルタント
新卒で中古車業界最大手の企業で4年半、営業として従事し、リーダークラスを経験。ヒュープロに入社後は、史上最短となる入社わずか5か月でリーダーに抜擢された。現在は5〜6名のメンバーをマネジメントしながら、会計業界特化のコンサルティングを牽引中。
柏野 真吾 様
株式会社柏野経営 専務取締役
地元の金沢で、父が創業した株式会社柏野経営の事業に参画。同社は今年で創業40年を迎える。また、企業コンサルティングの専門家として、中小企業へのAI活用を積極的に広める活動を行っている。「中小企業にAI活用を広めたい」というビジョンを掲げ、地域企業の生産性向上と、AIを活用した持続的な成長に尽力している。

企業情報

企業名
株式会社ヒュープロ
所在地
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-16-4 野村不動産渋谷道玄坂ビル 4階/6階(受付)
設立
2015年11月
代表者
代表取締役 山本玲奈
事業内容
士業・管理部門に特化した転職支援プラットフォームの運営
TEL
03-6455-2067