会計事務所は「経営支援インフラへ」―大手4グループに見る「経営コンサル」の最前線

会計事務所が担う領域は、IPO支援やM&A、事業承継、DX、経営管理、融資支援といった「企業の未来をつくる業務」へと広がっています。約2兆円規模の会計市場は、2.3兆円規模へ拡大したコンサルティング市場に接近しつつあり、専門性を土台に価値を拡張する「会計系コンサル市場」が新たな成長領域として形成されはじめています。
その動きを最も鮮明に示しているのが、業界トッププレイヤーの大規模化です。数百名から数千名規模の人員を抱え、全国・海外に拠点を展開し、数千社から数万社の顧問先を支える巨大なプロフェッショナルファームが台頭しています。
本記事では、辻・本郷税理士法人、AGS税理士法人/株式会社AGSコンサルティング、税理士法人山田&パートナーズ、ベンチャーサポート税理士法人の大手4グループを取り上げ、会計事務所が「経営支援インフラ」へと進化する最前線を紹介します。

中小企業の未来を支える存在として進化する税理士業界の現在地

近年、会計事務所が担う領域は、IPO支援、M&A、事業承継、DX、経営管理、融資支援など、企業の未来をつくる“攻めの業務”へと広がっています。

DXやサステナビリティ需要を背景に、日本のコンサルティング市場は急成長を続けています。総合コンサルティングファームのコダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社が発表した『日本のコンサルティング市場規模と将来予測』の2025年版によると、日本のコンサルティング市場規模は2.3兆円に到達しています。

一方で、総務省統計局「サービス産業動向調査」によると、2017年時点で、税理士事務所・公認会計士事務所の年間売上高は約1兆6,000億円を超えています。さらに、経済産業省・総務省「令和3年 経済センサス」では、2021年の売上高は約1兆9,000億円に達し、約2兆円に迫る規模となっています。

会計事務所が、DX支援、経営管理、融資支援、M&A、事業承継、IPO支援へと領域を広げていけば、それはもはや単なる税務代行ではありません。企業の経営課題に入り込み、成長を支えるコンサルティングそのものです。

約2兆円規模の会計市場の力が、各会計事務所の“攻めの経営努力”によって、2.3兆円規模のコンサルティング市場へと接近しています。

今後は、会計業界の専門性をベースに、コンサルティング領域へと価値を拡張する「会計系コンサル市場」が、新たなブルーオーシャンとして形成されていく可能性があります。

会計事務所の提供価値を拡張する巨大プレイヤーの台頭

会計事務所の進化を語るうえで見逃せないのが、業界トッププレイヤーの大規模化です。現在、会計業界を牽引するトッププレイヤーたちは、すでに数百名から数千名規模の人員を抱え、全国・海外に拠点を展開し、数千社から数万社の顧問先を支える巨大なプロフェッショナルファームへと成長しています。

一部の大手会計事務所は、もはや「個人事務所の延長」ではありません。売上規模、人員数、拠点網、専門人材の厚み、支援領域の広さという点で、一般の中堅・上場企業にも比肩する経済主体になりつつあります。

その客観的な裏付けとなるのが、一般社団法人会計事務所連携協議会が実施した「大規模会計事務所の実態調査レポート2025」です。同調査では、加盟する大規模会計事務所の平均売上高が38.4億円に達していることが示されています。これは、会計事務所の大規模化が一部の例外ではなく、業界構造そのものの変化として進んでいることを示す数字です。さらに、業界トップ層を見れば、その規模感はより鮮明になります。

  • 辻・本郷税理士法人は、グループ全体で2,700名を超える人員と全国80拠点超のネットワークを持ち、2万社を超える顧問先を支援しています。
  • AGSグループは、800名規模の専門家集団として、税務よりもコンサルティング領域の売上比率が高い独立系プロフェッショナルファームへと進化しています。
  • 山田&パートナーズは、1,000名を超える体制で、資産税・事業承継・国際税務・M&Aなどの高度領域を担っています。
  • ベンチャーサポートグループも、1,700名規模の士業グループとして、起業家支援を軸に全国展開を進めています。

こうしたトッププレイヤーの台頭は、会計事務所が「税務申告を行う専門家」から、「企業経営を総合的に支援するプロフェッショナルファーム」へと変化していることを象徴しています。

特に注目すべきは、単に規模が大きくなっているだけではない点です。各社は、税務・会計を土台にしながら、M&A、IPO、事業承継、国際税務、DX、資金調達、ファミリーガバナンス、サステナビリティといった高度な経営支援領域へと提供価値を広げています。つまり、大規模化の本質は「人数が増えたこと」ではありません。

中小企業の複雑な経営課題に対応するために、税理士だけでなく、公認会計士、コンサルタント、M&Aアドバイザー、国際税務の専門家、IT人材、金融・不動産・保険の専門家など、多様なプロフェッショナルを組織内で育成し、取り込みを始めていることにあります。

会計事務所は今、単独の士業事務所から、複数の専門機能を内包する「経営支援インフラ」へと進化しつつあるのです。

規模の拡大は、提供価値の拡張を意味している

これらのトッププレイヤーに共通しているのは、単に人員数や拠点数を増やしているだけではないという点です。

  • 辻・本郷税理士法人は、税理士法人をハブに専門会社を束ねる全国規模のプラットフォーム型モデルを築いています。
  • AGSグループは、税務とコンサルティングを両輪に、M&A、スタートアップ、国際業務へ深く踏み込んでいます。
  • 山田&パートナーズは、事業承継や資産税を起点に、ファミリーガバナンスや企業価値向上支援へ領域を広げています。
  • ベンチャーサポートグループは、創業期の経営者に寄り添い、士業ワンストップで起業家の成長を支えています。

それぞれの成長モデルは異なります。しかし共通しているのは、税務・会計を出発点としながら、企業の経営課題をより広く、より深く支援する方向へ進化していることです。

大規模化とは、単に「大きな事務所になること」ではありません。中小企業の複雑な経営課題に対応するために、専門人材を採用し、複数のサービスラインを整備し、全国・海外の拠点網を築き、顧問先との接点から生まれる多様なニーズに応えられる組織へ変わることです。会計事務所のトッププレイヤーは、すでにその段階に入っています。

税務・会計という強固な専門性を起点に、顧問先の成長、承継、再編、資金調達、海外展開、組織づくりまで支援する。そこには、会計事務所が中小企業の経営課題を最も近い距離で受け止め、解決へ導く存在へと進化している現実があります。

もはや会計事務所は、過去の数字を整理するだけの存在ではありません。企業の未来を支える「会計系コンサル」として、新たな成長市場を切り拓き始めています。

各法人の特徴一覧

本記事で取り上げる大手4グループの規模感、顧客基盤、コンサルティング領域、成長モデルを整理すると、それぞれの立ち位置の違いが明確になります。

辻・本郷税理士法人/辻・本郷グループ

項目
詳細
規模感
グループ全体約2,700名超/全国80拠点超/顧問先2万社超/グループ売上高319億円
顧客基盤・対象企業
年商1億〜5億円規模の中小企業を中心に、全国の地域企業を幅広く支援
主なコンサル領域
事業承継、M&A、IT・BPO、国際税務、資産承継、ファミリーオフィス、海外進出支援
特徴的な成長モデル
税理士法人をハブに、専門会社を連携させるプラットフォーム型
強み
全国の中小企業を支える士業の総合インフラ

AGS税理士法人/株式会社AGSコンサルティング

項目
詳細
規模感
グループ全体約800名超/売上規模約130億円/税理士・公認会計士各120名程度
顧客基盤・対象企業
中堅・成長企業、スタートアップ、海外展開企業、M&A対象企業など
主なコンサル領域
M&A、スタートアップ支援、国際業務、HR、システムコンサル、ファンド
特徴的な成長モデル
税務とコンサルを並列で展開し、売上の2/3をコンサル領域が占める独立系会計コンサル型
強み
Big4や大手FASとも競合する財務戦略ファーム

税理士法人山田&パートナーズ

項目
詳細
規模感
税理士法人約1,200名規模/関連グループ合算2,000名超規模/国内外に複数拠点
顧客基盤・対象企業
オーナー企業、富裕層、上場・大規模企業、医療・公益法人、海外展開企業など
主なコンサル領域
事業承継、M&A、資産税、組織再編、国際税務、ファミリーガバナンス、サステナビリティ
特徴的な成長モデル
資産税・事業承継を起点に、経営者と企業の未来設計まで支援する承継・資産コンサル型
強み
経営者の想いと財務データを統合する事業承継の高度専門ファーム

ベンチャーサポートグループ

項目
詳細
規模感
グループ全体約1,700名規模/グループ売上高260億円/全国に多数拠点展開
顧客基盤・対象企業
起業家、スタートアップ、中小企業、成長企業を中心に支援
主なコンサル領域
会社設立、創業融資、税務顧問、労務、登記、許認可、法務、不動産、保険
特徴的な成長モデル
企業支援に特化し、周辺士業をグループ内に内包する創業支援ワンストップ型
強み
起業家の最初の右腕となる創業支援インフラ

辻・本郷税理士法人|2万社超を支える、全国最大級の士業プラットフォーム

辻・本郷税理士法人 オフィス写真

  • 辻・本郷グループ 会長 本郷 孔洋 様

辻・本郷税理士法人は、会計業界の大規模化と総合化を象徴する存在です。

グループ全体で2,700名を超える人員を擁し、全国に80を超える拠点を展開。顧問先はグループ全体で2万社を超え、2025年9月期のグループ売上高は319億円に達しました。国内最大級の会計事務所グループとして、全国の中小企業や地域経済を支えています。

この規模感は、単に「大きな税理士法人」というだけではありません。全国各地の中小企業に対して、税務、会計、M&A、事業承継、国際税務、IT、BPO、資産承継、ファミリーオフィスまでを提供できる、巨大な士業プラットフォームとして機能している点に特徴があります。

同グループでは、税理士法人を顧客接点のハブとし、ITコンサル、BPO、M&A、資産承継、海外進出支援などの専門会社が連携する体制を構築しています。

税理士法人の担当者が、顧問先との定期的な面談の中で経営課題を把握する。そこで見つかった課題を、グループ内の専門会社へつなぎ、各分野の専門家が連携して解決にあたる。これが同グループの大きな強みです。

従来の会計事務所は、税務申告や会計処理を中心に顧客と関わってきました。しかし辻・本郷グループでは、税務を入口に、企業の成長、承継、海外展開、資産管理まで、企業と経営者のライフサイクル全体を支援する体制を整えています。

とくに事業承継領域では、相続税申告のような事後対応だけでなく、生前の株価対策、組織再編、後継者育成、経営伴走まで支援領域を広げています。資産承継では、保険、不動産、金融商品、遺言などを組み合わせ、プロジェクトマネージャー型で専門家を束ねる仕組みも構築しています。

これは、単なる「税務のワンストップ化」ではありません。税理士法人が顧客との信頼関係を起点に、必要な専門機能を組み合わせ、経営課題を総合的に解決するモデルです。

辻・本郷税理士法人の姿は、会計事務所が「税務申告の専門家」から「中小企業を支える経営支援プラットフォーム」へ進化していることを示しています。

AGS税理士法人/株式会社AGSコンサルティング|売上130億円規模、コンサル比率3分の2の独立系プロフェッショナルファーム

AGS税理士法人 オフィス写真

  • AGS税理士法人 統括代表社員 廣渡 嘉秀 様

AGSグループは、会計事務所から発展した会計系コンサルティングファームとして、非常に明確なポジションを築いています。

グループ全体の人員は800名規模に達し、売上規模は130億円。公認会計士・税理士240名超を擁する高度専門家集団です。中核となるのは、税務を担うAGS税理士法人と、コンサルティング領域を担う株式会社AGSコンサルティングです。

特筆すべきは、収益構成です。取材によれば、AGSグループの収益は、税務系が約3分の1、コンサルティング系が約3分の2を占めています。

つまりAGSは、税務・会計を出発点としながら、すでにコンサルティングを主力事業の一つに据えたプロフェッショナルファームへと進化しているのです。

特に注力しているのが、M&A、スタートアップ支援、国際業務です。

M&A領域では、数十億円から100億円規模のスモールミドルキャップ市場を主な対象とし、売り手・買い手双方に専門家がつくFA業務を軸に展開しています。単なるマッチングや仲介ではなく、企業価値評価、デューデリジェンス、財務戦略まで踏み込む点に特徴があります。

スタートアップ領域では、成長企業に対して、早い段階から内部管理体制、資本政策、事業計画、ガバナンス整備などを支援しています。IPOを目指すスタートアップであれば、「何を準備すべきか」だけでなく、「どのように実行すべきか」まで伴走できることが、同グループの強みです。

ただ、近年はIPOだけでなく、M&Aによる成長戦略や出口戦略も並行して検討する企業が増えています。いわゆる「デュアルトラック」の動きです。AGSグループは、資金調達、成長支援、IPO、M&Aを一体的に支援できる体制を持つことで、成長企業の幅広いニーズに対応しています。

さらに国際領域では、東南アジアを中心とした海外拠点を活用し、日系企業の海外進出を支援しています。税務・会計、組織再編、移転価格、海外子会社管理、グローバルファイナンス、クロスボーダーM&Aといった実務を、国内外の拠点で連携しながら支援する体制も整えています。

AGSグループの特徴は、「高度税務への対応力」と「コンサルティングの実行力」を両立している点にあります。税務・会計の専門性を土台に、M&A、IPO、国際といった高度な財務アドバイザリー領域へ踏み込む。その姿は、会計系コンサルが一般的なコンサルティングファームやFASと競合する時代に入っていることを示しています。

税理士法人山田&パートナーズ|上場企業グループと連携し、事業承継・資産税領域を高度化する総合型プロフェッショナルファーム

税理士法人山田&パートナーズ オフィス写真

  • 税理士法人 山田&パートナーズ 統括代表社員 三宅 茂久 様

税理士法人山田&パートナーズは、資産税、事業承継、M&A、国際税務、設備投資減税、医療・公益法人支援など、幅広い領域を手がける総合型税理士法人です。

同法人は単体でも1,000名を超える体制を有し、国内に20拠点、海外に11拠点を展開する大手税理士法人として、個人・法人の双方に対して高度な税務・財務サービスを提供しています。さらに、経営コンサルティング領域を担う山田コンサルティンググループは、東京証券取引所プライム市場に上場するコンサルティング会社(4792)であり、2026年3月期連結決算では267億円の年商を計上しています。山田&パートナーズと山田コンサルティンググループを合わせると2,000名を超える規模で、税務・会計と経営支援の両面から企業を支える大型プロフェッショナルファームとしての存在感を高めています。

同法人の大きな特徴は、相続・資産税、事業承継領域に早くから注力し、税務申告にとどまらないコンサルティング機能を確立してきた点です。この土台に、最近では国際相続等のクロスボーダー案件の対応も強みとして加わっています。

また、山田コンサルティンググループとの連携により、M&A、事業再生、組織再編、海外展開、経営戦略といった領域まで支援範囲を広げられる点も強みです。税理士法人が担う税務・財務の専門性と、上場コンサルティング会社が担う経営支援機能が組み合わさることで、企業の成長、再編、承継を一体的に支援する体制が形成されています。

また、近年注目されているのが、ファミリーガバナンスの領域です。オーナー企業では、会社の経営と一族の資産が密接に結びついています。そのため、次世代へ円滑に事業を引き継ぐには、株式承継のスキームだけでなく、家族内の意思決定ルール、後継者の育成、財産管理の方針、親族間の合意形成が不可欠です。山田&パートナーズは、こうしたファミリービジネス特有の課題に対し、税務・法務・財務の専門家が連携しながら、企業と一族の持続的な発展を支える仕組みづくりを支援しています。

さらに、M&A、組織再編、国際税務、海外進出支援、サステナビリティ関連のコンサルティングなど、上場企業をはじめとする大規模法人への企業価値向上に直結する領域にも支援範囲を広げています。

山田&パートナーズの取り組みは、会計事務所の提供価値が「税額計算」から、「企業と経営者一族の未来設計」へ広がっていることを示すものです。

ベンチャーサポート税理士法人|1,700名規模・全国61拠点、年商260億。すべての起業家と資産家に伴走する総合コンサルティンググループ

ベンチャーサポート税理士法人 オフィス写真

  • ベンチャーサポートグループ 総代表 中村 真一郎 様

「日本を、起業先進国へ。」をミッションに掲げるベンチャーサポートグループは、起業支援と相続を軸に成長を続ける総合コンサルティンググループです。全国61拠点・1,700名規模、売上高260億円を誇り、日本最大級の専門士業と、保険・金融・不動産・M&A・BPOなどの法人を内包しています。最大の特徴は、会社設立と相続における圧倒的な集客力、問題解決に迫る営業力、そしてスタッフ個々人の高い収益意識にあります。

日本の開業率は約5%と、欧米諸国の約10〜13%に対して2〜2.5倍もの差がありますが、同グループはこれを「日本における大きな伸びしろ」と捉えています。税理士の顧問ビジネスにおいて創業領域を専門とすることは、集客コストや収益性、人材問題など様々な参入障壁が存在しますが、同グループはこれらを全て可能にする独自の組織体制を築いてきました。

生存競争の激しい創業領域に特化することで、挑戦できる環境が整い、雇用が守られ、企業が成長し、社会が良くなると考えています。起業段階から築き上げられる1次情報や深い信用関係をベースに、経営と人生に伴走する総合コンサルティングの提供価値を高め、高い収益性を実現。AIによって起業の障壁が下がり、「人の価値」が問われる時代において、起業家支援の価値はより存在感を示していくはずです。

また、相続分野においても独自のアプローチを展開しています。日本全体の申告件数のうち約6割、遺産分割調停・審判になる案件の約9割が「相続財産1億円以下」というデータがあります。金融機関や相続専門法人が1億円以上の案件を受任する傾向がある一方で、同グループは財産の大小を問わず、本当に困っている一般家庭など幅広い層のサポートに注力。単なる手続き支援に終わらず、その後の資産形成まで総合的にコンサルティングすることで、高い顧客満足度と収益性を実現しています。

起業から始まる「会社のすべて」と、相続を中心とする「個人にまつわるすべて」に対し、財務・税をベースとしてすべての起業家と資産家に寄り添う。総合コンサルティングを通じて社会に貢献していくベンチャーサポートグループの姿は、税理士業務の枠を超えた起業家や資産家の人生に伴走する唯一無二のコンサルティンググループへと進化していることを示しています。