元国税調査官・税理士の松嶋です。
税務雑誌等から注目すべき税務記事を紹介します。
今回はT&A master927からです。
相続税の申告報酬について、相続人が支払いを拒絶した事例が紹介されています。顧客が支払わない理屈がすごいのですが、
・ 見積書は一人の相続人にのみ提示されており、他の相続人は知らないから、見積書をもらった相続人以外に支払い義務はない
・ (依頼した)税理士法人が作った申告書で申告をしていない
・ 土地の評価などが不適切
こんなことを言い出した模様。
裁判所は、契約書や見積書だけでなく、税理士法人の報酬規程なども交付されていることから、相続人が共同して申告を委任していることは明白であるとしています。具体的には、
・ 契約書に共同して依頼する旨の内容が記載
・ 報酬金額も報酬規程に照らし、相続人の数などに応じて計算されている
といった点がありました。結果として、本件の報酬については連帯債務的にどの相続人も全額払う義務がある、とした模様です。
加えて、申告書を使わなかったとしても、その申告に瑕疵が認められない以上は、申告報酬の支払いも拒絶できないと判断しています。この点、評価が不適切と顧客は言っていますが、裁判所は不相当な点などは見つからないと判断しています。
これだけ見ると当然の判断と思いますが、教訓としてはお客様はきちんと選ぶこと、そして手付金なども含め、お金を取るタイミングはきちんと決めておくことが重要ということでしょうか。本件の報酬は115万程度とあり、裁判してでも回収する必要性もあったのかもしれませんが、仮に報酬が少額で裁判費用に見合わないなら、不本意ながら私たちとしても泣き寝入りしなければならないことも多いと考えられます。
信頼に足るお客様でないとこのようなトラブルが起こりますので要注意です。