元国税調査官・税理士の松嶋です。
税務雑誌等から注目すべき税務記事を紹介します。
国税速報6686より。

贈与を受けた相続時精算課税適用財産の申告漏れについての解説が掲載されています。贈与時にこの財産を申告していない場合であっても、当然のことながら贈与税の修正申告如何に関係なく、相続時には課税が行われることになる。以下の通り、相続時精算課税制度適用財産は「贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの」が該当し、「算入された」ものでないからである。

相続税法21条の15の1項
特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者については,当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第21条の9第3項(注:相続時精算課税適用財産に係る贈与税額の計算)の規定の適用を受けるもの(~取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る。)の価額を相続税の課税価格に加算した価額をもつて,相続税の課税価格とする。

このため、「贈与の時効は成立したから」と相続税の調査で主張しても意味をなさない。贈与税は取れないが、相続税に跳ね返りますよ、で議論が終了する。
一方で、贈与税額の控除は「課せられた贈与税」が対象のため、課されていなければ控除は認められない。結果として、修正申告せずに贈与税の納付がなければ、贈与税の控除は当然取れない。

相続税法21条の15の3項
~第21条の9第3項(注:相続時精算課税適用財産に係る贈与税額の計算)の規定の適用を受ける財産につき課せられた贈与税があるときは,相続税額から当該贈与税の税額(第21条の8の規定による控除前の税額とし,延滞税,利子税,過少申告加算税,無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)に相当する金額を控除した金額をもつて,その納付すべき相続税額とする。

この場合の修正申告であるが、相続時精算課税の特別控除は認められない。贈与税の期限内申告において特別控除をしていないからである。

相続税法21条の12(相続時精算課税に係る贈与税の特別控除)1項
前項の規定(注:相続時精算課税制度の贈与税の特別控除)は,期限内申告書に同項の規定により控除を受ける金額,既に同項の規定の適用を受けて控除した金額がある場合の控除した金額その他財務省令で定める事項の記載がある場合に限り,適用する。

便利なように見えて、ミスにはなかなか厳しいのが相続時精算課税。贈与税と相続税の一体化がいずれ導入されると目されているが、そうなるとこのあたりの問題はよりクローズアップされるのだろう。おそらく、贈与税と相続税の一体課税の仕組みは、相続時精算課税を前提に組み立てられると想定されるので。