
DXからAXの時代へ―。急速に進化するAIにより、入力業務の自動化が当たり前となった今、次なる課題として浮上する「監査業務の増加」や「業務の属人化」に、どう向き合うべきか。それを解決するカギとなるのが、マネーフォワードが構想する「AIエージェント」や、紙証憑の自動記帳サービス『STREAMED』の進化、そして未来の資金繰り予測だ。会計業界の新たな羅針盤となるAI戦略の全貌を、VSG相続税理士法人の古尾谷が取材した。

- 左 株式会社マネーフォワード永井 博様
- 右 株式会社マネーフォワード君島 寿章様
「DX」の先を見据えた「AX」ビジョン
まずお二人の自己紹介からお願いします。
永井:私はマネーフォワードで、中小企業領域と士業領域のSaaS事業の責任者を担当しています。
君島:私は元々マネーフォワードから出向する形で、『STREAMED』を開発している株式会社クラビスに参画しました。3年前に創業者から代表を引き継ぎ、現在は士業領域の戦略やプロダクト開発を見ています。
昨今の金利上昇や深刻な人手不足など、中小企業を取り巻く環境は大きく変化していますが、これらの社会問題をどのように捉えていますか?
永井: まず金利上昇に関してですが、これは中小企業にとって資金調達コストの上昇につながり、経営の足かせとなります。そのため、これまで以上に無駄のないキャッシュフロー管理と、早期の経営判断が求められるようになります。
また慢性的な人手不足になることで、従業員一人ひとりへの業務負荷が増大し、採用コストも上昇します。少ない人数でいかに生産性の高い業務を遂行できるかが、中小企業が生き残る鍵になってくると思います。
御社ではこういった社会問題をどのように解決しようとお考えでしょうか?
永井: テクノロジーを通じて解決する方法として、バックオフィスにおけるルーティンワークを、テクノロジーでできるだけ効率化・自動化すること。そして、経営判断を限りなくリアルタイムで行える仕組みをサービスに実装することがあげられます。
これまでは、入力工程を効率化し、試算表を早期に確認できることがメリットでしたが、今後は、よりキャッシュフローに近い形での可視化や、将来の資金繰り予測といった、経営者の関心に沿った領域へのテクノロジーの実装が必要です。
マイクロソフトと LinkedIn による調査では、日本のAI活用率は32%とかなり低い水準にあるようですが、これは世界的に見ても遅れているということでしょうか。
永井: このデータは2024年のものなので、直近の状況はかなり変化していると思います。しかし、そもそも経営層にAI活用の明確なビジョンがなかったり、従業員が「AIを自身の業務にどう活かすか」という具体的なイメージを持てていなかったりするケースも少なくありません。また、セキュリティ面でつまずいて導入に至らない企業もいらっしゃるのかなと思います。
【挿入】仕事で「生成AI」を使用している割合
裏を返せば、それだけ日本にはAIの活用によって解決できることが多い、ということですね。2025年は「DX(Digital Transformation)から「AX(AI Transformation)へ」というビジョンを掲げているそうですが、「AX」とはそもそもどういったものでしょうか?
永井: DXは、人がITやクラウドを使って業務を効率化する取り組みに対し、AXはAIが自律的に動いて業務を変革していくという概念です。これまで人間が担当していた経理や人事などのルーティンワークを、AIが人を介さず自動で進めていくイメージです。経理業務でいえば、請求書が届いたらAIがその内容を自動で検証し、支払日に基づいて資金繰りを考慮した上で支払い手続きを行い、会計処理まで完了させる、といったことが可能になります。
当社では2025年9月よりAIエージェント(図参照)による「AI請求書ダウンロード代行」の提供を開始しました。
これは、AIエージェントが請求書受領メールを検知し、AIがリンクやパスワードを検出し、各社の請求書ダウンロードサイトを自律的に操作して、請求書の取り込みから支払い依頼作成までを代行するというものです。これにより、請求書の受領、ダウンロード、支払い依頼作成といった業務フローが自動化され、請求書受領業務を大幅に効率化できます。
【挿入】AIエージェントとは
↓図解イメージ(作成予定)
AIエージェントとは:ユーザーが明示的に指示しなくても自律的に考え行動できる高度なAIシステムのこと
請求書の受領を検知➡自動で請求書をダウンロード➡請求書の取り込み➡支払い依頼
そこまで自動化できると、業務の効率は飛躍的に上がりますね。
永井: 人間が会話の中で指示を出すだけで、非常に優秀な部下(AI)が指示通りに業務を遂行してくれる、といったイメージになります。
「2025年はAIエージェント元年」と銘打ち、具体的なリリース計画も示されていますが、現在開発を進めている「AIエージェント」が、会計事務所や顧問先の業務をどのように変えていくと考えていますか?
永井: AIエージェントは、あくまで一つの手段でしかありません。大切なのは、AIという技術を使って「どのような未来を目指すか」という点です。
会計事務所の皆様には、AIにより業務の自動化や標準化が進んだ先で、資金調達の支援や具体的な節税対策の提案など、中小企業の課題解決という、より本質的な業務に向き合っていただきたいと考えています。既に同様のサービスを提供されている事務所もいらっしゃいますが、より多くの事務所がこうした付加価値の高い提案をしやすくなるテクノロジーの実装を進めています。
マネーフォワードが提供するAIエージェントなどを導入して、業務の自動化を徹底すれば、短期間で収益を生み出すことにつながる、ということですね。
マネーフォワードが目指すプロダクトの進化
【挿入】マネーフォワードが目指す世界
今後の機能拡充や新商品について、注目ポイントを教えてください。まずは、入力面ではどのような機能開発を予定されていますか?
永井:業務の効率化・自動化という点では、「自動仕訳ルール」という機能が、ユーザーの皆様から大きなメリットとして感じていただいておりました。これは、通帳やレジなどのデータを連携していただくと、一度人間が学習させた内容を基に、次回以降、勘定科目を自動で提案するというものです。ただ、これまでの設計では、AIが提案して学習させた内容を適用している状態であっても、最後は必ず人間が確認して、登録ボタンを押す必要がありました。
この部分について、一定の精度が担保されている仕訳は、人間が確認しなくても、登録までを完全に自動で行うという機能を実装する予定です。
また、先日『マネーフォワード クラウド会計』APIの公開とMCPサーバーの実装という2つの機能もリリースしました。
APIが公開されたことにより、顧問先が使用しているシステムとの直接連携やスプレッドシートの明細を自動で取り込むといったことが可能となります。その結果、直接サービスが連携されていないシステム間の転記作業が不要となり、より入力業務の効率化を加速させることができます。さらに、これまでCSVインポートのみだった明細の取り込みも、スプレッドシートとの自動連携によってボタン一つで取り込めるようになり、よりリアルタイムでの会計処理を実現できます。
もう一つのMCPサーバーの実装では、ご利用のAIツールを使って『マネーフォワード クラウド会計』を操作することが可能になります。例えば第三者が作ったAIエージェントに請求書を自動で読み込ませた仕訳情報を『マネーフォワード クラウド会計』に仕訳登録するといったことが実現できます。この機能によって、AIによる業務効率化をさらに後押しする形で会計業務の効率化を促進することができます。
公開APIは「マネーフォワード クラウド公認メンバー」のシルバーメンバー以上、MCPサーバーはプラチナメンバーがご利用できる機能ですので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
AI OCRとして更なる機能の拡充が期待される『STREAMED』ですが、今後の展望や方向性についてお聞かせください。
君島: AI OCRの拡張とは少し視点が異なるかもしれませんが、『STREAMED』で本当に実現したいのは、「会計事務所の製造部門を完全に巻き取ること」です。飲食業界で言うところのセントラルキッチンのような存在になりたい、という思いがあります。
それは会計事務所にとっても非常に心強いですね。
君島: 現状は、会計事務所の皆様に証憑書類をスキャンしていただき、我々はデータ化するという部分のみを担っています。しかし、理想は顧問先からの資料回収、スキャン、データ化、そして会計ソフトへの取り込みまでをすべて自動化することです。
つまり、PCを開いたときには、資料のデータ化と入力がされており、「この内容で問題ないか」を確認するところから業務がスタートします。会計事務所の「製造部門」を丸ごと外部に持っているような感覚です。もちろん、製造部門が完全になくなるわけではありませんが、その負担は大幅に軽減できると思います。
AI OCRによるデータ化だけでなく、その前段階であるスキャニング作業にかかる会計事務所の人件費削減まで実現するということですね。
君島:はい、その方向に『STREAMED』を進化させていきたいと考えています。AI OCRの技術は、あくまでデータ化の精度や速度を向上させるための一つの手段です。しかし、どれだけ技術が進歩しても、物理的な紙の証憑がなくなることはありません。だからこそ、最も手間のかかる「スキャン」という作業そのものを無くすことを目標にしています。
顧問先からデータで資料を受け取る際は、どのような受け渡し方法をお考えですか?
君島:現在も専用のサーバーはありますが、今後の『STREAMED』で構想しているのは、GoogleドライブやDropboxといった、オンラインストレージとの直接連携です。顧問先が共有フォルダに資料をアップロードするだけで、『STREAMED』がそれを自動で検知し、データ化まで完了するイメージです。これまで行っていた、「オンラインストレージからファイルをダウンロードし、『STREAMED』にアップロードし直す」という作業が一切なくなります。
また、多くの顧問先ではスキャンしていただくことが難しいので、紙の資料を送っていただければ我々がスキャンを代行する「スキャンサービス」も提供しています。
AI OCRの機能として、二人のオペレーターが同じ証憑をそれぞれ入力し、内容が一致した場合にデータ化が完了する仕組みでしたが、現在のプロセスはどのようになっているのでしょうか。
君島:ダブルチェック体制が基本であることは変わりません。しかし、実は『STREAMED』ではかなり前からAIを導入しており、AIとAIが入力したデータが合っていた場合、人の確認は行いません。一方で、手書きの領収書のように、AIが「難易度が高い」と判断した証憑については、人とAIで確認をするなど、証憑の難しさに応じて業務フローを変えています。
その難易度の選別もAIが行うのでしょうか?
君島:業務フローの選別から、データ入力のアサインといったオペレーションまですべてAIが指示をします。
『STREAMED』の裏側では、AIが担う役割が徐々に増え、その分、人間の介在が少なくなってきているんですね。
君島:感覚としては、AIの役割が増えたことで、ユーザー数が増加しても人員を増やさずにすんでいる、という方が近いですね。
今後はマネーフォワードのような専門企業にデータ化を一任し、精度の高い「仕訳」として納品してもらう方が、結果的に品質も高く、人件費の削減にも繋がりそうですね。
君島:その通りだと思います。『STREAMED』のデータを人が入力したのか、AIで入力されたのかを気にするユーザーはあまりいません。大切なのは「いかに高い精度で、いかに速くデータが返ってくるか」という結果です。その期待に応えるためにも、我々がAIを最大限に活用し、サービスの品質をさらに向上させていきますので、安心して『STREAMED』をご利用いただきたいと考えています。
監査業務の革新とAPI連携の可能性
クラウド会計の普及に伴い、「入力後の監査業務の負担」という新たな課題が浮上しています。今後リリース予定の機能ではこういった課題の解決にもつながるのでしょうか?
永井:クラウド会計は処理速度の面でかなり速くなったのですが、ユーザー様からは「インストール型に比べて、画面のリロードにやや時間がかかる」「修正がしづらい」といったお声をいただくこともあります。2026年リリース予定の「AIを活用した監査機能」や「Googleスプレッドシート連携」といった機能の拡充は、まさに入力後の修正業務をいかに自動化・効率化していくかという点に主眼を置いています。
ソフトの根幹の部分においても、まだまだ利便性を高めていくということですね。
永井: 例えば、会計事務所ごとにお使いの勘定科目のチェックリストがあって、監査担当の方がそれを一つひとつ見て修正していく、という業務があると思います。そういった標準的なチェック項目をある程度サービスの中に組み込んで、レビューの段階でボタンを押せば、チェックが必要な箇所が一通りリストアップされ、まとめて仕訳に反映できる、といったことができると良いなと考えています。
君島:AIを活用した入力業務の効率化の余地は、すでにだいぶ小さくなっています。紙の証憑は、『STREAMED』と連携すればデータが『マネーフォワード クラウド会計』上に自動で反映されるので、それを学習させるだけで完了します。残る手入力は、ほとんどが現金取引だと思うので、ボリュームとしてはかなり小さくなります。入力業務を90%効率化した後の、残りの10%をさらに効率化しても、会計事務所にとってのインパクトはもうあまり大きくありません。
一方で、「監査」は、これまで効率化があまり進んでいない領域です。AIの登場で、監査機能を効率化しやすくなったという環境の変化もあり、私たちが今提供したいと考えているのは、まだ効率化の余地が大きく残っている監査・レビューの領域なのです。
レポート作成に関しても、推移表を新たに追加予定があるとのことですが、これは年間推移表のような月次レポート機能が追加されるのでしょうか?
永井: そうです。特に『マネーフォワード クラウド会計』上の情報をGoogleスプレッドシートに連携したい」というお声は非常に多くいただいていました。多くの事務所で、最終的にデータをExcelに書き出し、お客様向けにカスタマイズして報告されていると思います。そこで、スプレッドシートに対してのAPI連携の実装を、各帳票で順次進めているところです。
中でも推移表は、ぜひ早めに出していただきたいです!
永井: そこが一番使いますよね(笑)。
マネーフォワードでは今後税務ソフトを開発する予定はありますか?
永井:今のところ、税務申告ソフトを自社で開発する予定はありません。というのも、税務申告は会計の専門家である先生方にとっても、絶対に間違えられない領域です。仮に我々がソフトをリリースしたからといって、すぐに使っていただけるものではなく、長年培われた既存ソフトへの信頼性が、ものすごく問われる分野だと考えています。
そうした中で、我々は株式会社NTTデータが提供する「達人シリーズ」と従来からAPI連携を強化させていただいており、今後もより多くの帳票で連携を深めていく方針です。また、「達人シリーズ」以外のソフトをお使いの方に対しても、申告書へのデータ取り込みがよりスムーズになるように、今回XBRL形式での決算書出力に対応しました。
金融機関側の問題が大きいとは思うのですが、API連携が切れてしまう課題に対する対策はありますか?
永井:おっしゃる通り金融機関側の問題もありますが、我々としても対策は講じています。会計事務所向けの顧客管理システム「マネーフォワード クラウドパートナー」の中に、データ取得エラーという項目を設け、API連携が切れてしまっている金融機関の顧問先だけを検索できるようになっています。
全てを解決できず申し訳ない部分ではあるのですが、例えば「毎月1日にデータ取得エラーが起きている顧問先を洗い出して対応する」といった形で、月のオペレーションとして業務フローに組み込んでいただくことで、連携エラーを解消していただくことは可能かなと思います。
エラーの発見がしやすくなるだけでも助かりますね。
業務変革を支える新たなプラットフォーム
「業務の属人化」の解決につながるという、AIを活用した業務管理プラットフォームについて教えてください。
君島:特に成長されている会計事務所は、お客様を獲得できないというよりは、事務所内のオペレーションが構築できず、結果としてお客様の受け入れが難しい、あるいは退職者が出たタイミングで一時的に業務負荷がかかり、全体の効率が落ちてしまう、といった課題をお持ちです。これは、もはや会計ソフトが解消できる限界を超えていると感じています。
そこで、会計事務所のスタッフが、今どういった業務を行い、どういった進捗状況にあるのかを可視化する業務管理ツールを作ろうと考えました。その手始めとして、2025年8月に、顧問先へ一斉にメッセージを配信する機能をリリースしています。
これは、Chatworkと連携して配信する機能ですね。
君島:そうです。これまで、今月の資料を送って欲しいといった連絡を、顧問先一社一社に個別で送っていたと思いますが、その手間を一斉配信によって効率化しました。これは、ゆくゆく確定申告や年末調整といった、業務フローの管理がAIでできるようになった時に、「1月末になったら、資料回収の連絡を一斉に送る」など、進捗管理と密接に紐づく機能になっていく想定です。
メール業務が無くなるだけで、かなりの時短になりそうです。
君島:その先々で本当にやりたいのは、例えば月次業務における「資料回収 → 試算表作成 → レビュー → 顧問先と面談」といった一連のタスクの流れを可視化することです。しかし、業務の可視化だけであれば、既存のツールでも実現できています。我々が目指すのは、資料回収というタスクを実行すると、顧問先への依頼メールが自動で一斉送信される、といったように、ワークフローの自動化と可視化を両立することです。単なる管理ツールではなく、管理しつつ業務も効率化することで、業務フローが明確になり、結果的に属人化の解消にもつながると考えています。
会計ソフトと連動して自動化されれば、「会計と申告の進捗状況を、いかに正確に把握するか」という業務管理の問題点が解決するということですね。
君島:会計事務所で使用している会計ソフト、税務ソフト、業務管理ツールなどのマスターデータが、事務所内に点在してしまっているのが、根本的な課題だと考えています。そうなると、どの情報が最新で正しいのか分からなくなりますし、全てのツールに設定や記録をしなければなりません。
『マネーフォワード クラウド』が単なる会計ソフトの入口ではなく、マスターを一元管理し、「今日、何をすればいいか」が一目でわかるような、会計事務所の「オールインワン・プラットフォーム」になることを目指しています。
これからの時代は、連携の深さと、どこまで自動化されるかが、より一層使いやすさの鍵になりますね。
AI時代を迎える会計事務所の未来
業務の効率化が進んだ後は、会計事務所の先にいる中小企業へどのような付加価値の提供が可能になるのでしょうか?
永井: 経営者にとって一番の関心事は、会計そのものというよりは「資金繰り」であるケースが非常に多いと思います。現在、『マネーフォワード クラウド会計』にもキャッシュフローを可視化する画面はありますが、将来的なキャッシュフローがいつどのように推移していくのか、という未来予測はまだ十分な可視化はできていません。この課題を解消するために、金融機関の口座情報やクレジットカードの利用明細を自動で取得するとともに、『マネーフォワード クラウド請求書』、『マネーフォワード クラウド経費』、『マネーフォワード クラウド給与』と連携し、まだ仕訳として登録される前の将来の入出金データの自動集約を可能にする機能をリリース予定です。この仕訳登録前のデータを用いることで、半年先までの将来のキャッシュフローを予測し可視化することができます。これにより、「いつキャッシュがなくなるか分からない」といった経営者の漠然とした不安に応えることができると考えています。
そこまで予測ができると、資金繰りの話をしやすくなって、税務以外の付加価値の提供にもつながりますね。
永井:今はPCでの閲覧がメインですが、スマートフォンでも手軽にキャッシュフローの可視化ができるよう、合わせて実装を進めているところです。より経営者のニーズにお応えしつつ、会計事務所の皆様からも、お金に関する課題解決という側面のご提案ができるようにしていきたいと思っています。
他にも、業務範囲の拡張につながる機能の構想はありますか?
永井:今後はSaaS(Software as a Service)をご利用いただいているお客様の金融体験をより良いものにしていきたいと考えています。
例えば今、グループ会社のマネーフォワードケッサイ株式会社が、売掛金を早期に売却してキャッシュを得ることで、資金繰りを改善できるオンライン型ファクタリングサービスを提供しています。他にも、三井フィナンシャルグループおよび株式会社三井住友銀行と共同で、「デジタルバンク(BaaS)」の提供に向けて構想を進めています。こうした新しい金融体験を、SaaSツールの中からシームレスにお客様へお届けできる未来を目指しています。
これだけ充実した機能が提供されている分、ユーザーとしては今後の価格改定が気になるところです。
永井:法人向けのWebサイトから直接ご登録いただくプランについては、2025年の6月に価格改定したばかりですので、直近で新たに値上げをする予定はありません。
先ほどお話しした資金繰り予測のサービスや、AIエージェントによる業務自動化をさらに推し進め、お客様ご自身にその価値を十分に感じていただけた段階で、将来的に価格を改定させていただく可能性はもちろんあるかと思います。円安の影響によるサーバー費用の増加や、人件費の上昇といった側面も一部にはありますが、基本的にはあくまでお客様への提供価値の向上とセットで、価格改定は検討していきたいというのが、我々の考えです。
最後に、AI時代という大きな変化の時を迎える会計事務所の皆様へ、メッセージをお願いいたします。
永井:AIのような新しいテクノロジーの導入と、会計業界の変化は、基本的にセットで考えられるケースが多いように思います。かつては、インストール型の会計ソフトが広く普及し、それを活用することで大きく成長を遂げた会計事務所がありました。
そして2010年代中盤にクラウド会計が登場すると、今度は若い世代を中心に、クラウドを導入して事務所内の業務を効率化し、一気に成長する事務所が現れました。そして今回、AIを導入することによって、会計業界には再び大きな変化が訪れるのではないかと考えています。
AIを導入できる事務所とできない事務所とで、今後さらに提供するサービスの品質に差ができそうですね。
永井:おっしゃる通り、差は広がるでしょう。なぜなら、日本の人口減少という課題は今後も変わらないからです。この課題を解決する解決のひとつの手段がテクノロジーであり、クラウドであり、AIへと置き換わっていくのだと思います。オペレーショナルな業務はAIに任せ、会計事務所の皆様が中小企業の課題解決に注力できるような世界を実現していきたいと考えています。
その中で大事なのは、お客様の課題を深くヒアリングして的確な提案を行えるか、それに沿った新たなサービスの開発を進められるか、といった部分だと思います。我々は、会計事務所の先生方が、より会計の本質的な業務に注力できるようなサービスを提供し続けていきます。そして、中小企業の経営者の方々にとっても、従業員を増やすことなく、経営という本質的な業務に集中できるように、『マネーフォワード クラウド』を、これからも開発していきたいと考えています。
マネーフォワードのサービスを導入することで業務はさらに効率化され、付加価値業務に集中できる。まさに理想のモデルが目指せると感じました。貴重なお話をありがとうございました。
※記載されている会社名および商品・製品・サービス名(ロゴマーク含む)は、各社の商標または各権利者の登録商標です。
参加者プロフィール
- 永井 博 様
- 株式会社マネーフォワード 執行役員
マネーフォワードビジネスカンパニー SMB事業推進本部 本部長
2008年に新卒で総合商社に入社後、全社リスク管理制度の構築・商業施設事業のリスク管理業務等に従事し、2015年に株式会社マネーフォワードへ入社。中小企業向けSaaS事業の士業向けパートナーセールスに携わり、関西拠点の営業組織の立ち上げや、本部全体の事業企画・戦略策定関連業務等に従事する。2021年より中小企業向けSaaSの事業統括を行う。 - 君島 寿章 様
- 株式会社マネーフォワード
マネーフォワードビジネスカンパニー SMB事業推進本部 副本部長 兼 事業戦略部部長
2015年株式会社マネーフォワードに入社後、BtoB向けのカスタマーサクセスを担当。2018年よりグループ会社の株式会社クラビスに参画し、取締役としてセールス及びマーケティングを管掌する。2022年には同社の代表取締役社長CEOに就任し、経営の中枢を担う。2024年より現職。士業領域における事業戦略を管掌。
企業情報
- 企業名
- 株式会社マネーフォワード
- 所在地
- 〒108-0023 東京都港区芝浦3-1-21 msb Tamachi 田町ステーションタワーS 21F
- 設立
- 2012年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 グループCEO 辻 庸介
- 事業内容
- プラットフォームサービス事業















