高齢化が進む現代において、相続発生件数も年々増加している。それに伴い、相続対策のニーズは会計事務所にとってますます重要になるだろう。しかし、「どのように顧客に提案すれば良いか」「既存のシステムでは限界を感じている」といった悩みを抱える先生方も少なくない。そんな課題を解決し、相続業務の新たな可能性を拓くツールとして注目される、『MyKomon(以下、マイコモン)』の相続財産シミュレーション機能に焦点を当てる。開発者と実際の活用事務所の先生方の声を通して、その強み、活用法、そして未来への展望を探る。
誰でも使いやすい相続対策提案ツール
- 左 株式会社名南経営ソリューションズ開発2部 マネージャー 伊藤 太一様
- 中央 VSG相続税理士法人 代表税理士 TAX CONNECTION株式会社 代表取締役 古尾谷 裕昭
- 右 税理士法人京都名南経営 代表 近藤 実生 様
古尾谷:まずは、今回のテーマであるマイコモンの『相続財産シミュレーション』機能の強み・特色について、教えてください。
名南経営/野村様(以下野村):マイコモンの機能の一つである相続財産シミュレーションは、事務所全体で相続業務に取り組める点が最大の魅力です。税務顧問が中心の事務所でも、相続案件は必ず発生します。しかし、対応できるのは一部の担当者のみという事務所がほとんどで、多くの機会損失が生じています。
マイコモンのシステムは、分かりやすさと使いやすさが特徴であり、相続知識の少ない担当者でも、ヒアリングシートに基づき情報入力するだけで、お客様が一目で理解できる資料を提示できます。これにより、相続対策を希望されるお客様に対して、相続知識の少ないスタッフでも簡単な提案から始めることができます。お客様が本格的な取り組みを希望される場合には、専門の担当者に引き継げば良いのです。
このように、マイコモンの相続財産シミュレーションを活用することで、事務所全体で相続業務に取り組むことができ、お客様への貢献度も高まると考えております。
名南経営/伊藤様(以下伊藤):野村の話にもありましたが、「資産税にそこまで詳しくない担当者でも提案できるツールがほしい」という声が、開発のきっかけの一つになりました。
もともとは、名南経営の資産税部門で使っていたExcelツールの見直しの話からスタートしています。ただ、どうせ作り直すなら“見た目もいいものにしよう!”ということで、そこから開発が本格化していきました。その後、現場の担当者が使いやすいシステムが欲しいというニーズや、担当者ごとに属人化されて検算しづらいExcelツールから脱却したいというニーズ、さらには2015年の大改正以降に高まった相談ニーズなども後押しとなって、開発が進んでいきました。
資産税部が実際に使っていたツールがベースになっていますので、現場目線での使い勝手にこだわったシステムになっているのが、やはり大きな強みですね。
古尾谷:現在マイコモンを導入している事務所数はどのくらいでしょうか?
名南経営/鈴木様(以下鈴木):3,000事務所を超えております。会計事務所が3万件ある市場全体で考えると、およそ1割のシェアになります。その中で相続財産シミュレーション機能を使っている事務所は、約1000事務所弱という印象です。
古尾谷:マイコモンユーザーであれば、新たに相続システムを導入する必要がないですし、給与計算、業務管理、教育といった豊富な機能が一体となっている点は本当に便利だと思います。
実務者たちが語る生前対策の魅力
古尾谷:ここからは、相続財産シミュレーションを実際に活用している事務所の皆様にお話を伺います。まずは皆さんの自己紹介からお願いします。
近藤様(以下近藤):初めまして、税理士法人京都名南経営の近藤です。名古屋の名南経営さんとは別法人ですが、以前は10年ほど名南経営に在籍し、資産税業務に従事してきました。父の税理士事務所を引き継ぐ形で京都に戻り、現在14年になります。Web集客を中心に相続税申告や、そこから二次相続対策といった形で生前対策の遺言書作成のお手伝いや保険のご提案もさせていただいております。
迫田様(以下迫田):初めまして、ベンチャーサポートの迫田です。私はもともと起業家支援を中心に長年取り組んできましたが、法人クライアントの将来やご家族の生前対策に関するお悩みが多いことから、数年前より生前対策に注力するようになりました。年間100件の生前面談を担当しています。
毛内様(以下毛内):ベンチャーサポートの毛内と申します。生前対策をメインに、年間100~200件程度の生前面談を担当しております。弊社の集客は主にインターネットを活用したWeb集客で、お客様から直接お問い合わせをいただき、相続対策や遺言作成のご相談に応じて面談を実施しております。また、銀行との提携もございまして、銀行からのご紹介も承っております。相続税の申告はもちろんのこと、生前対策へのニーズも高く、相続税対策、遺言作成、認知症対策、さらには保険や不動産なども含めたトータルなご提案をしております。
- 左 ベンチャーサポート税理士法人 税理士 迫田 馨 様
- 右 VSG相続税理士法人 統括マネージャー 毛内 輝夫 様
古尾谷:昨今、積極的に生前対策を提案している事務所はまだ少ないように思います。そこで、生前対策をご提案することによる会計事務所側のメリット、現場でのやりがいについて教えてください。
迫田:生前対策の面白さは、お客様の将来に対する不安を安心に変え、その方の人生に深く関わることができる点にあります。
保険会社や不動産会社も生前対策に携わることがありますが、どうしても自社の商品を販売することが中心になりがちです。しかし、税理士が中心となって生前対策を行うことで、お客様にとって最も身近な存在として、様々な選択肢の中から最適な提案ができると考えています。お客様の課題や悩みを整理し、優先順位をつけ、「今はこれをしましょう」といった具体的なアドバイスができるのは、税理士ならではの強みです。自社の商品を売るのではなく、お客様の未来の資産承継のために、様々な選択肢をコントロールしながら一緒に進めていける点に、私は生前対策の大きな魅力を感じています。
毛内:お客様の視点から考えると、税金対策はもちろん重要ですが、感情面でのサポートも非常に重要です。相続をきっかけに家族関係が悪化したり、揉めてしまうケースは少なくありません。そうした不安を抱えるお客様に対して、税金だけでなく、問題解決に向けた具体的な提案を行い、トータルでサポートすることで、非常に感謝されますし、生前対策の魅力の一つだと思います。
また、会計事務所側の視点から考えると、生前対策は収益源の多様化に繋がります。税金だけでなく、法務的な手続き、不動産、保険など、幅広い分野でのサービス提供が可能になるため、ビジネスチャンスが広がります。
近藤:相続は誰しもが経験する問題ですし、相続人が抱える不安や悩みを解消し、幸せな未来を共に考えることに、とてもやりがいを感じます。もちろん、中には難しいケースもありますが、様々な人と関わり、様々な考えを目にすることで新たな発見があり、自身の成長に繋がっています。
私自身、親の介護や死別を経験する年齢になり、お客様との会話の中で、介護施設に関する情報交換など個人的な相談に乗っていただくこともあるので、仕事を通して、自身の身近な課題についても考えさせられるきっかけにもなっています。「楽しい」という言葉は適切ではないかもしれませんが、相続業務は私にとって、非常にやりがいのある仕事だと感じています。
- システムスクリーンショット
活用シーンと操作性の具体例
古尾谷:皆さんは、どのようなシーンでマイコモンの相続財産シミュレーションを活用していますか?
近藤:私が最も活用しているのは『財産診断書』です。財産分割案シートが、分割シミュレーションをA3紙のサイズで一覧で見せてくれる点が非常に重宝しています。これにより、1次相続だけでなく、2次相続や相続対策のシミュレーションも簡単に作成できるのが魅力です。
迫田: 私も近藤先生と同様に、主に生前対策の入り口として活用しています。私の場合は、初めてお会いするお客様には、まず財産状況をヒアリングし、大まかな相続税額を手計算でお伝えしています。そして、「より正確な相続税額を帳票に落として、次回ご報告させていただきます」という流れで、2回目のアポイントメントに繋げています。2回目のご面談では、主に財産診断書の総括、相続税の概算、財産分割案の資料を用いています。マイコモンの資料は見やすさに重点が置かれているため、本当に使い勝手が良いと感じています。
毛内:特に総括のページでは、相続財産の内訳がグラフで視覚的に把握できます。遺言書作成時に財産分割案一覧を活用することで、遺言作成後の各相続人の税額まで一覧で確認でき、相続税支払い後の手残りまで考慮した遺言内容の検討が可能です。また、相続対策シミュレーションでは、保険加入による税金軽減効果などが具体的な数字で示せるため、お客様への訴求力が高いと感じています。
近藤:例えば銀行から提案される資料は専門家が見れば理解できるのですが、一般のお客様にとっては、ただの数字の羅列になってしまいがちです。その点、マイコモンの相続財産シミュレーションではお客様にとって知りたい大事なポイントがビジュアル化されており、とてもわかりやすいとおっしゃっていただけます。お客様が一目で内容を把握するには、資料の見やすさ、見栄えの良さも重要なのだと感じています。
- システムスクリーンショット
古尾谷:相続財産シミュレーションの特に良い点を教えてください。
近藤:面談時にお客様からヒアリングしながら簡単な入力をすることで、初回面談の段階で概算の税額イメージをその場で提示できる点は、受注率を高める上で非常に有効だと感じています。特に、相続人が複数いらっしゃる場合、作成した帳票を持ち帰り、他の相続人の方と相談されるケースもあります。詳細な部分はご依頼後詰めていくとしても、1時間程度の面談でヒアリングから帳票作成まで行えるシンプルな点が、とても魅力的だと思います。
毛内:お客様にとって一目で分かりやすく、持ち帰ってご家族に説明しやすい資料であるという点が、大きな利点だと感じています。また、マイコモンは達人とデータ連動をしているため財産分割データの再入力が不要です。現在はまだ一部の連動ですが、今後そのような活用も少しずつ増やしていきたいと考えています。
迫田:私も、細かい入力をしなくても、しっかりとした資料が作成できる点と、システムの使いやすさが素晴らしいと思っています。出力できる資料も、表紙からして非常に洗練されており、高級感があるため、お客様からは「無料でここまでしてくれるのか」という驚きと感動に近い反応をいただくこともあります。そこから、遺言、家族信託、保険など、様々な提案に繋げやすく、結果としてお客様の満足度向上に貢献しています。
詳細な資料を作成しようとすると、どうしても入力項目が多くなり、時間もかかってしまいますが、マイコモンの場合は入力箇所が比較的少なく、あっという間に資料が完成します。案件が増えて忙しくなると、資料作成に時間をかけられなくなることもありますが、マイコモンであれば手軽に作成できるため、非常に助かっています。
古尾谷:直感的で理解しやすい点が好評ですね。伊藤さんは開発者として色々工夫されていると思いますが、いかがでしょうか?
伊藤:弊社の開発で最も重視しているのは「シンプルさ」ですので、まさにその点を評価していただき大変ありがたく思います。
税務申告ソフトは多機能な反面、どうしても複雑で使いこなすのが難しいという側面があります。そのため、弊社のシステムは、全てを網羅することはできませんが、シンプルで多くの方にとって使いやすいという点を追求することで、明確な棲み分けができていると考えております。
古尾谷:税務申告ソフトにも同様の機能はないのでしょうか?
近藤:現在使用している税務申告ソフトには、確かに「生前贈与をするとこうなります」といった試算表のようなものはありますが、カラーで視覚的に訴えるような提案書はありません。強いて言えば、10年後の預金残高の推移や、相続税額の減少を棒グラフで示す程度です。計算自体は正確だと思いますが、思った通りの場所に数字が入力されなかったり、一部だけ変更できなかったりと、操作の心理的ハードルが高く、なかなか利用が進まないのが現状です。
一方、マイコモンの財産診断書はExcelに出力できるため、お客様に注目していただきたい箇所を黄色く塗りつぶしたり、文字を追加したり加工が可能です。
毛内:弊社で使っている「達人」でも、相続対策向けにすぐ作成できるようなシミュレーション機能はついていないんですよね。マイコモンはExcelで加工できる点が本当に便利で、私も近藤先生と同じように、重要な箇所を色付けして強調したりといった加工を頻繁に行っています。必要な部分だけを抽出できる点も、大きなメリットだと感じています。
野村:かつて上司から聞いたことがあるのですが、名南経営創業者の佐藤澄夫は「パッケージが大事だ」とよく言っていたそうです。つまり、見た目で人は手に取るかどうかを決めるので、まずは手に取って見てもらわないことには、どんなに良い提案書を作っても意味がない、ということです。この考え方が、まさに商品開発にも活かされているのではないかと思います。
現場の声が未来を創る
古尾谷:反対に、開発要望や、「こうしてくれると使いやすい」といったご意見はありますか?
毛内:先ほど少しお伝えしたデータ連動についてですが、達人との連動では財産評価の情報のみ連動できるようです。可能であれば、達人で入力した相続人情報なども含めて、全てのデータを連動できれば、財産分割案がより簡単に作成できるようになると思います。それが可能になれば、相続業務に関わる多くのスタッフが活用することになり、ユーザー数の増加にもつながるのではないでしょうか。
伊藤:貴重なご意見ありがとうございます。連動による入力の手間を省き、二度手間をなくしたいと、私たちも強く意識している点です。いただいたご要望を参考に、どこまで実現可能か検討させていただきます。
古尾谷:それでは最後に、名南経営さんから税理士の先生方へ、メッセージをお願いします。
鈴木:市場には様々な相続対策システムが存在しますが、本当に『使える』と感じられるものは少ないのではないでしょうか。私たち名南経営は、単なるシステムベンダーではありません。日々、お客様の相続と向き合う実務家集団です。だからこそ、表面的な機能だけでなく、提案のしやすさ、お客様が理解しやすいビジュアル、そして事務所全体の業務効率向上といった、最終的な『使い勝手』まで徹底的に考慮したシステム開発を行っています。現場の課題を肌で感じている私たちだからこそ、既存のシステムでは満たされなかったニーズに応えることができると自負しております。お客様との信頼関係を築き、相続業務を新たな収益の柱とするために、ぜひ私たちの経験とノウハウが詰まったマイコモンの相続財産シミュレーションをご検討ください。
古尾谷:ぜひ、多くの会計事務所様にマイコモンの相続財産シミュレーションを活用していただきたいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。
- 鈴木 将之 様
- 株式会社名南経営ソリューションズ 東京事務所マネージャー
法政大学卒業後、某日系コンサルティングファームに入社。2005年名南経営に転職し、東京事務所にてMyKomonのソリューション営業に従事。2011年に福岡事務所の新規開設責任者として赴任後、2014年に東京事務所に戻り、2017年には執行役員に就任。2025年4月より現職。 - 野村 治史 様
- 株式会社名南経営ソリューションズ 大宮事務所所長 兼 東京事務所マネージャー
大学卒業後、20年以上にわたり一貫してサービス業に従事。
お客様貢献を信条とし、現場を重視した支援を行っている。
これまでに全国延5,000事務所以上の訪問・面談経験を有しており、会計事務所の生産性向上に定評がある。 - 伊藤 太一 様
- 株式会社名南経営ソリューションズ 開発2部 マネージャー
名古屋大学大学院卒業後、2012年に新卒で名南経営に入社。2018年より、相続財産シミュレーション、楽しい給与計算、WEB明細、勤怠管理、会計担当者養成動画などを担当する開発2部のマネージャーに就任。 - 近藤 実生 様
- 税理士法人京都名南経営 代表
2002年税理士登録後、名古屋市の大手税理士法人入社、資産税部でマネージャーを務める。その後2010年近藤正路税理士事務所入所。2014年税理士法人に組織変更し、代表社員に就任。 - 迫田 馨 様
- ベンチャーサポート税理士法人 税理士
- 毛内 輝夫 様
- VSG相続税理士法人 統括マネージャー
MyKomon(マイコモン):
(株)名南経営ソリューションズが提供するユーザー数3000事務所以上の会計事務所向けの生産性向上ツールおよび顧問先との情報共有サービスです。記事でご紹介した相続財産シミュレーションだけでなく、相続電子会議室でのデータ受け渡し、所内での情報共有、顧問先への資料提供・配布、給与明細の自動作成、請求書発行、報告書の作成・管理など、会計事務所や社労士事務所の業務を効率化し、顧問先との安全かつスムーズなコミュニケーションを支援ししています。