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FEATURE会計事務所キャリア特集 Vol.2

銀行員から事業承継のプロへ!異業種転職で年収1.7倍へ

メガバンクの安定したキャリアを捨て、会計業界へと飛び込んだ一人の若手プロフェッショナル。関西部門の立ち上げをほぼゼロから担い、一人で年間1.2億円の売上を叩き出すまでに急成長を遂げた背景には、金融機関が見過ごしてきた「中小企業の事業承継市場」に眠る巨大なビジネスチャンスがあった。異業種からの転職で年収は前職から1.7倍への躍進を叶えた理由とは何か。そして、グループ年商200億円を見据え、M&Aと高付加価値化で業界を牽引する税理士法人の経営戦略とは。ミカタ税理士法人の柴田総代表と事業承継の最前線で輝く原井氏に、TAX CONNECTIONの税理士・古尾谷が取材した。

メガバンクからミカタ税理士法人へ

ミカタ税理士法人の事業承継部門を牽引されている原井さんですが、これまでのご経歴から教えていただけますか。

原井様:私は2009年に新卒で三井住友銀行に入行しました。最初の5年間は支店で富裕層向けの資産運用、いわゆるリテール営業を担当し、その後3年間はSMBC日興証券に出向して同様に資産運用の営業を行っていました。出向が終わるタイミングで社内公募制度を利用し、事業承継の専門部署に応募したんです。金融商品を提案する中で、富裕層の方々はそれ以外の課題にも強い関心を持っていると感じ、事業承継の領域で専門性を高めたいと考えたのがきっかけです。合格後は三井住友銀行のプライベートアドバイザリー部に配属され、6年間勤務しました。その後、ミカタ税理士法人に転職して現在3年半ほどになります。

銀行の事業承継部門では、どのような規模の企業を担当されていたのでしょうか。

原井様:純資産が概ね20億円以上の法人がターゲットでした。関西、北陸、中四国などのお客様に株式の承継や組織再編などを中心にご提案していました。

銀行時代のお仕事にはどのようなやりがいや課題感がありましたか。

原井様:有名企業のオーナー経営者とお話しできることは非常に貴重な経験でした。また本部の経験が豊富な先輩方や、出向で来られているさまざまな税理士法人の方々に教えていただきながら連携できたことも大きいです。銀行にいるだけでは得にくい高い専門性を磨くことができ、非常に充実していました。

その後、なぜ転職を考えられたのですか。

原井様:もともと銀行に強い不満があったわけではありません。ただ、将来のキャリアや評価を考えたときにモヤモヤする部分もありました。営業店なら数字で成果が見えますが、本部は定性的な評価や運の要素も大きい。36歳になり、50歳になったときの自分をなんとなくイメージできたときに「このまま既定路線を進むより、想像もつかない環境で挑戦するほうが面白いのではないか」と思い、転職を決意しました。

ほぼゼロからの立ち上げ。1人で年間1.2億円の売上を叩き出すまで

ミカタグループに入社されたきっかけと、当時の状況を教えてください。

原井様:転職スカウトサービスで声をかけてもらったのがきっかけです。当時は関西の事業承継部門が手薄な状態で、これから関西エリアを盛り上げていこうというタイミングでした。着任した際に多少メンバーはいたのですが、体制はゼロに近く、最初の2年間はほぼ私一人で事業を行っていました。

立ち上げ初期は一人でどのように案件を獲得したのですか。

原井様:既存の社内顧客の掘り起こしから始めました。また、提携している同業の税理士法人や銀行からの紹介を受けたりしながら、提案から実行まで一人でこなしていました。

銀行時代と会計事務所での事業承継業務の違いはありますか。

原井様:一番違いに驚いたのは意思決定のスピード感です。会計事務所のお客様はオーナー経営者ですので、社長が納得すれば一気に話が進みます。銀行時代は年間約200件アプローチしても実際の実行は2〜3件程度でしたが、ミカタでは年間20件ほど実行できています。

また、銀行時代は会計系コンサルティングファームと一緒に動くこともありましたが、大規模な案件の割に報酬があまり高くならない傾向がありました。一方で、ミカタで扱う対象企業の純資産規模は1億〜5億円ほどが中心で、銀行時代より小規模になりますが、適切に効果を説明すれば正当な報酬をいただけますし、進捗もスムーズです。金融機関が見過ごしがちなこの層にこそ、大きなビジネスチャンスと収益機会が眠っていると実感しました。

事業承継のフィーとしては、平均するとどのくらいになるのでしょうか。

原井様:アベレージで500万円から1,000万円ほどです。もたらされる効果に基づいて算定するため、同じスキームでも500万円のケースもあれば2,000万円になるケースもあります。一人で動いていた時期は、年間1.2億円ほどの売上を達成しました。

1人で1.2億円の売上は素晴らしい成果ですね。

原井様:年間20件ほど手掛ければ、平均単価600万円でその規模に達します。

法人・個人を丸ごとサポートする事業承継コンサルティング

具体的にはどのような提案を行っているのでしょうか。

原井様:後継者がいる企業に対しては、組織再編などを活用しスムーズに株式を渡す準備をお手伝いします。後継者が不在でM&Aを検討している企業に対しては、会社分割で本業とそれ以外の資産を切り分け、売りやすい状態に整える提案も行います。さらに株式の承継提案だけでなく、相続税試算を行い、保険の活用、贈与、公正証書遺言の作成まで、法人・個人を含めた相続周りの対策を丸ごとサポートしています。

事業承継コンサルティングの売上に加え、保険や遺言などの付随業務からも収益が生まれるわけですね。見込み先へは、事業承継部門から直接アプローチされるのですか。

原井様:各支店の顧客リストから対象企業を抽出し、支店スタッフにアナウンスを出してアポイントを取得してもらいます。支店側に選定を任せると主観が入ってしまうため、純資産規模や顧問料の額などを基準に機械的にリストアップして仕掛けています。

チーム体制と、直近の売上規模についても教えてください。

原井様:現在関西エリアの事業承継部門は5名体制です。今年の売上着地は2億7,000万円ほどを見込んでいます。

少数精鋭で高い利益率を確保されていますね。採用はどのように進められているのですか。

原井様:主にビズリーチなどを活用し、自社でターゲティングを行ってスカウトを送っています。

どのような人材をターゲットにされているのでしょうか。

原井様:M&A仲介を経験された方や、20代後半から30歳手前の若手銀行員を中心にお声がけしています。一度M&A仲介などの厳しい環境を経験されている方の方が、当社の業務に対する理解が早いと感じています。

ミカタ税理士法人 事業承継コンサルタント 原井悠志様

年収は前職から1.7倍へ躍進

年収面の変化や、会計業界で働く魅力についてはいかがですか。

原井様:年収は銀行員時代と同額でミカタに入社しました。その後、成果に応じて昇給し、今年の年収は転職時から1.7倍ほどになる見込みです。自分の成果がダイレクトに給与や実績に反映されるのは大きな魅力ですね。

また、銀行以上にお客様との距離が近く、銀行はお金を貸す立場上、上下関係が生じやすく、お客様の本音を引き出しにくい面がありました。対して会計業界は対等な目線で向き合えます。また、提案だけでなくスキームの実行まで一貫して責任を持つため、自分が手掛けた手応えや影響度を強く実感できる点が大きな魅力です。当グループには異業界出身者が多く活躍しており、多様な人材が輝ける業界だと実感しています。

原井さんにとって、ミカタ税理士法人とはどのような組織でしょうか。

原井様:成果を出せばしっかりと結果が伴う組織です。一般的な会計事務所のイメージとは異なり、良い意味で野心的でガツガツと成長を目指す活気にあふれた場所だと感じています。

今後のビジョンや目標をお聞かせください。

原井様:会社の売上目標に合わせて組織をさらに拡大していきたいと考えています。現在の5名体制から、今後は10名、15名へとチームを拡大し、事業承継の領域で業界ナンバーワンを目指していきます。

5年で50億円投資。ミカタグループの成長戦略

続いて、ミカタグループ全体の戦略と事業承継部門の位置付けについて、柴田代表にお話を伺います。現在のグループの規模感を教えていただけますか。

柴田様:拠点は税理士、行政書士、弁護士、社労士を合わせて32拠点あります。お客様は昨年の申告ベースで個人を含めて約1万5,000件、毎月顧問料をいただく契約のお客様は約7,000件です。スタッフ数は650名ほどになります。

今後もM&Aによる規模の拡大を継続するご予定でしょうか。

柴田様:5年間で50億円を投資し、将来的には年商200億円を目指す計画をしています。売上3億円程度の事務所であれば、16件ほどM&Aを行うイメージです。年間5件ペースであれば、事務方は大変ですが十分に実行可能です。

後継者がいる事務所であっても、M&Aを選択してグループに加わるケースがあるそうですね。

柴田様:例えば○△×の40名規模の事務所では、創業者の先生がゼロから大きくされ、お子様も事務所に入っておられましたが、事務所が大きくなりすぎたこともあってか、家族会議を経てどこかに譲渡すると決められたそうです。その後仲介会社から当社にお話があって3ヶ月ほどでまとまり、統合から2年が経ちますが、現在もお父様とお子様揃って働いていらっしゃいます。

他にも譲渡先の選択肢がある中で、御社を選ばれる理由は何だと思われますか。

柴田様:譲渡価格は大体どこも同じような金額で差はないと思うんです。結局は相性や、当グループに入ることで事務所がさらに伸びるという相乗効果の絵を描けるかどうかが決め手になるかと思います。実際に、統合後は売上が伸びています。

適正報酬への改定とアナログ業務の見直し

統合した後に売上を向上させるための具体的な施策やポイントについて教えていただけますか。

柴田様:ネジを締め直せば伸びるんです。やるべきことは非常にシンプルで、まず顧客ごとの年間報酬とかかった時間を集計し、時間単価を割り出します。異様に単価が低い案件については適正な報酬への改定をお願いします。解約も若干は発生しますが、顧問数が多少減っても全体の収益は向上します。

次に地方で長くなりがちな移動時間を削減するため、ご来社いただくかオンラインか訪問回数を減らすかの3つを徹底させます。さらに、いまだに振替伝票を切っているようなアナログな業務フローを見直し、作業効率化を図ります。

現場の反発を抑えるために意識されていることはありますか。

柴田様:急激に改革を進めると拒否反応が出ますから、何より大事なのはスタッフに寄り添いしっかりと心をつかむことです。私自身も定期的に現地へ足を運びますし、優秀な人材をピックアップして年4回一泊二日で東京に集める「次世代育成塾」を開催しています。

現場のサポートのために、本部から人員を派遣されることもあるのでしょうか。

柴田様:幹部を1〜2名派遣します。私自身もそうでしたが、40代までは鉢巻きを締める思いで毎日必死に働くものです。ですが50代以降になると、経験値は高まる一方で体力やモチベーションはどうしても落ちてきます。そうしたタイミングで、何をすべきか明確にした上で「これをやって欲しい」と現場を動かせる人材を送り込んでいます。だいたい30人規模の事務所になると、所長先生が指示を出しても全体が動かなくなり、停滞しがちです。そうして少し遅れてしまった部分を適正化して普通の状態に戻すだけで、見違えるように良くなります。

会社を継続させてより発展させていくという事業承継の本質的な取り組みだからこそ、グループに参画して経営が向上する事務所がほとんどなのですね。

柴田様:最近では、若い先生方も譲渡を考えられる方が増えています。コロナ以降、特に「人が採用できない」という悩みを抱えておられますね。

昔と比べると採用環境も大きく変わっていますよね。

柴田様:そうですね。ただ、業界全体として人材がいないわけではないんです。大手ならではのブランド力や成長性がないと、小さな事務所では人が集まりにくくなっているということだと思います。

事業承継・相続・保険・不動産の提案で利益を出す

そうしてベースが整った後は、どのように収益性を高めていくのでしょうか。

柴田様:保険の販売や、不動産、そして事業承継や相続対策の提案です。当社がM&Aで統合した事務所の多くは、こうした事業承継や保険などの提案ができていませんでした。税務会計の基盤の上に高付加価値な提案をできるようにするだけで、しっかり利益が出るようになります。

おっしゃる通りですね。保険の手数料収入も大きいですし、相続においても遺言の作成や遺言執行まで引き受けられれば、将来の相続案件も確実に受託できるわけですから。

柴田様:あとは、当社が一番得意としているオーナー企業の事業承継ですね。ここは非常に高い報酬をいただける領域でもあります。

統合会計事務所の事業再生・収益向上戦略。Phase 1 ベース構築(適正報酬への改定、移動時間の削減、アナログ業務の見直し)から、Phase 2 高付加価値提案(事業承継・相続対策、不動産活用、保険販売)へ

事業承継部門を牽引する原井さんのような銀行出身者の活躍について、柴田代表はどう評価されていますか。

柴田様:原井くんは優秀で仕事も丁寧ですし、メガバンク出身という安心感もあります。事業承継メンバーには銀行、証券会社、M&A仲介会社の出身者が多いですが、彼らが手掛ける事業承継に相続・保険などの周辺領域を合わせると、グループ全体で8億〜10億円規模の売上になっています。彼らが獲得する売上は全体から見ても非常に大きいですね。

御社では、事業承継コンサルティングをいつ頃からスタートされたのですか。

柴田様:創業当時からです。私が独立前に勤務していた掛川会計事務所は、都市銀行と提携して顧客に相続対策や事業承継をご提案する、当時としては先進的な事務所でした。そこでノウハウを学び、独立後も事業承継を強みに顧客基盤を広げてきました。

事業承継は高度なノウハウが必要なため、手を出さない会計事務所が多い印象です。

柴田様:少し勉強すれば誰でもできます。税理士試験に合格する方がよっぽど難しいですよ。ただ、失敗した際のリスクが高いため敬遠されている側面はあります。

そうしたリスクや難しさがある領域を扱いつつ、全国に拠点を拡大されています。代表のトップマネジメントに頼らず組織が自走する体制をつくるために、どのような点を重視されていますか。

柴田様:そもそも会計事務所はビジネス構造として非常にシンプルなんです。法律で商品が決まっており、働く人も真面目。ただ営業が苦手なだけです。そこを補強し、適切なマーケティングと方向性、そして高付加価値商材を投入すれば確実に収益が出ます。M&Aで加わった事務所に対しても、給与や休日などの待遇を良くし、互いの理解を深めながら改革を進めれば大量離職などは起きません。採用を強化し、幹部やリーダーシップを持つ人材を育てながら、グループの方向性を示し続けることを最も意識しています。

お二人とも、本日は貴重なお話をありがとうございました。

柴田 昇様
ミカタグループ 総代表
1964年京都府生まれ。大阪学院大学卒業後、大阪市の掛川会計事務所に入所し、富裕層向けの事業承継や相続対策などの税務サービスに従事。1994年に独立開業。その後、税理士法人SBCパートナーズ(現・ミカタ税理士法人)などを中心とするSBCグループ(現・ミカタグループ)を構築。これまで30件のM&Aを実行し、600名を超える業界屈指の規模へと成長させる。
原井 悠志様
ミカタ税理士法人 事業承継コンサルタント
大手金融機関出身。事業承継のスキームを通じて数多くのお客様のご支援を経験。ミカタ税理士法人では、国税三法を活用した事業承継対策に幅広く対応する。

引用について

本記事は出典を明記のうえ引用できます。 出典:タックスコネクション 全国の税理士・会計事務所のポータルサイト(2026-11-05)